バカロレアと哲学
2013年6月17日にフランスで大学入学資格試験のバカロレアのうち、哲学の試験が実施された。今回はそこでどういう問題が出題されたかについて紹介したい。
フランスにおけるバカロレア (baccalauréat) は、大学への入学資格を得るための国家的な統一試験である。フランスのリセ ((日本でいうと高等学校に相当。)) (lycée) の最終学年では哲学の授業が必須となっており、バカロレア受験の際も文系・理系関係なく哲学を受験しなくてはならない。
哲学の試験は4時間である。与えられた問題に対して、文章を書いて答えるというものだ。専攻ごとに3問出題されるが、すべてに答える必要はない。1問を選んで答えれば良いのだ。
人文系の哲学の問題
2013年に、人文系 (littéraire; L) の生徒に課されたバカロレアの哲学の問題は以下の通りである。
- 言語は道具でしかないのか? (Le langage n’est-il qu’un outil ?)
- 科学は事実の証明に限られるのか? (La science se limite-t-elle à constater les faits ?)
- デカルト『エリザベートへの手紙』の抜粋に対する解説 ((テキストの抜粋はそこそこの長さがあるため翻訳しなかった。フランス語での問題文を見たければ、Europe1.fr のBac philo 2013 : tous les sujets par sérieという記事を参照のこと。))
言語 (langage) に対する問題は過去にも出されたことがある。例えば、2009年の人文系の哲学で「言語は思考を曲げて伝えるのか?」 (Le langage trahit-il la pensée ?) という問題が出された。そもそも、言語をどう捉えるかは哲学にとって重要な問題の1つなので、哲学の試験で出題されることは当然と言えば当然である。
科学に関する問題はよく見られる主題である。理系でなく、人文系に対しても科学に関する問題が出されるというのがポイント。自分の専門分野だけでなく、幅広く関心をもっていないとうまく答えることができない。2011年には人文系の哲学で「科学の仮説を証明することは可能か?」 (Peut-on prouver une hypothèse scientifique ?) という問題が出されている。
経済社会系の哲学の問題
2013年に、経済社会系 (économique et social; ES) の生徒に課されたバカロレアの哲学の問題は以下の通りである。
- 我々は国家に対していかなる義務を負うか? (Que devons-nous à l’Etat ?)
- 認識を欠いた場合、解釈できるか? (Interprète-t-on à défaut de connaître ?)
- アンセルムス『調和について』 (De la concorde) の抜粋に対する解説 ((テキストの抜粋はそこそこの長さがあるため翻訳しなかった。フランス語での問題文を見たければ、Europe1.fr のBac philo 2013 : tous les sujets par sérieという記事を参照のこと。))
国家に関する問題としては、2012年の理系の哲学で「国家がなければ我々はより自由になるだろうか?」 (Serions-nous plus libre sans l’Etat ?) という問題が出されたことがある。
理系の哲学の問題
2013年に、理系 (scientifique; S) の生徒に課されたバカロレアの哲学の問題は以下の通りである。
- 政治に関心を持たずに道徳的にふるまうことはできるか? (Peut-on agir moralement sans s’intéresser à la politique ?)
- 労働は自意識を持つことを容認するのか? (Le travail permet-il de prendre conscience de soi ?)
- ベルクソン『思考と動き』(La pensée et le mouvant) の抜粋に対する解説 ((テキストの抜粋はそこそこの長さがあるため翻訳しなかった。フランス語での問題文を見たければ、Europe1.fr のBac philo 2013 : tous les sujets par sérieという記事を参照のこと。))
理系だからといって、科学に関する問題が出されるわけではなく、広く社会に関する問題が出題される。
労働に関する問題は2012年も出されていた。理系では「働くということは単に有用ということだけなのか?」 (Travailler, est-ce seulement être utile ?) という問題が出されたし、人文系では「働くことで何が得られるか?」 (Que gagne-t-on en travaillant ?) という問題が出された。