どうやって鏡文字にするか
“Facebook”を“ʞoodɘɔɒᖷ”にするように、英数字を鏡文字のように、すなわち左右対称の形にして面白おかしく見せることができる。これは、英数字を鏡うつしにした形とよく似た文字を使っている。例えば、“b”を実際に鏡うつしにするかわりに、これを鏡うつしにした形によく似ている“d”を用いるのである。
鏡文字にした形を自分で見つけるのは大変だろうが、一応簡単に鏡文字にできるウェブサービスがあり、これを使えばすぐに鏡文字にしてみせることができる。また、この記事に、英数字を鏡文字にした形とよく似た文字の一覧を付けたので参考にしていただければ幸いである。ちなみに、セリフ体のフォントよりも、サンセリフのフォントを使ったほうが、鏡文字らしく見える。
なお、本格的に鏡文字を使いたい場合は、この記事の末尾に、TeXを使って鏡文字にしたり、CSSを使って鏡文字にしたりする方法を挙げたのでそちらを参照されたい。
自動的に鏡文字にしてくれるウェブサービス
英数字を自動的に鏡文字にしてくれるウェブサービスとして、txtn.usで提供されている“Mirror Words”というものがある。英語で書かれているウェブサイトだが、英語が大して分からなくても問題なく使えるだろう。
Mirror Wordsの使い方はとても簡単だ。Mirror Wordsの一番上の“Input text”という入力欄で、英数字を入力すれば、下の方の欄に鏡文字にしたものが表示される。
なお、このウェブサービスでは入力欄で直接入力しないと、鏡文字にしてくれない。つまり、入力欄にカーソルを合わせて一文字ずつ入力すればそれが鏡文字になる。しかし、どこかからテキストをコピーしてこの入力欄に貼り付けても、それは鏡文字にならない。
このウェブサービスでは結果が出る欄が3つあり、それぞれ変換の結果が異なる。“Mirrored or flipped text”は文字を鏡文字にするが、文字の順番は変えないものである。“Reversed or backwards text”は文字を鏡文字にした上で、文字の順番をも逆にする。つまり、“Mirrored or flipped text”なら、“ABC”が“AᙠƆ”になる。これに対して、Reversed or backwards text”なら、“ABC”が“ƆᙠA”になる。
あともう1つ“Inverted or upside down text”という結果欄もある。これは、“twitter”が“ɹəʇʇɪʍʇ”になるように、文字を180度回転させた結果を表示させる。なお、文字を180度回転させるウェブサービスは、Rot180 encorderやLunicodeというのがあるので、そちらを使うのが良いと思う。私も前に、「twitter→ɹəʇʇɪʍʇのように英数字を180度回転して表示する方法」という記事で180度回転させることについて色々と書いてある。
なお、Mirror Wordsの変換は完全なものではない。鏡文字にしてくれない文字も結構ある。そういった場合は、以下の鏡文字にした例の表をつかって補完していただければ幸いである。
英数字を反転して鏡文字にした例
以下では、個別の英数字を鏡文字にした形と合致あるいは類似する文字を紹介する。1つの文字に対して複数の候補を挙げた場合もある。
表中で難しい用語はWikipedia日本語版にリンクを貼ってあるので、そちらの説明を参考にしていただきたい。なお、表中にあるIPAとは、国際音声記号 (International Phonetic Alphabet) のことである。
英大文字
元の形 | 反転後の形 | 反転後の形は本来どういう字か | Unicode |
---|---|---|---|
A | A | ローマ字のA(エー) | U+0041 |
B | ᗺ | カナダ先住民文字の1つ | U+15FA |
C | Ↄ | アンチシグマと呼ばれ、かつてラテン語でPSの音を示すのに用いられた(大文字) | U+2183 |
C | Ɔ | アフリカの言語の表記に用いられることがある | U+0186 |
D | ᗡ | カナダ先住民文字の1つ | U+15E1 |
E | ∃ | 論理学などで存在量化子 | U+2203 |
E | ヨ | カタカナのヨ(よ) | U+30E8 |
E | ョ | 小書きのカタカナのョ(ょ) | U+30E7 |
E | Ǝ | パンナイジェリア文字で使用 | U+018E |
F | ߔ | ンコ文字でpの音を表す | U+07D4 |
F | ᖷ | カナダ先住民文字の1つ | U+15B7 |
F | ꟻ | 詳細不明 | U+A7FB |
G | Ꭾ | チェロキー文字でheの音を表す | U+13AE |
H | H | ローマ字のH(エッチ) | U+0048 |
I | I | ローマ字のI(アイ) | U+0049 |
J | し | ひらがなのし(シ) | U+3057 |
J | ᒐ | カナダ先住民文字の1つ | U+1490 |
K | 丬 | 「壮」や「将」といった漢字の部首で、「しょうへん」と呼ばれる | U+4E2C |
L | ᒧ | カナダ先住民文字の1つ | U+14A7 |
M | M | ローマ字のM(エム) | U+004D |
N | И | キリル文字のИ(イー) | U+0418 |
O | O | ローマ字のO(オー) | U+004F |
P | ꟼ | 詳細不明 | U+A7FC |
Q | ꈲ | 彝文字の1つ | U+A232 |
R | Я | キリル文字のЯ(ヤー、大文字) | U+042F |
R | ᖆ | カナダ先住民文字の1つ | U+1586 |
S | ᔓ | カナダ先住民文字の1つ | U+1513 |
S | Ƨ | 1957年のチワン語アルファベットで第2声調を表す | U+01A7 |
T | T | ローマ字のT(ティー) | U+0054 |
U | U | ローマ字のU(ユー) | U+0055 |
V | V | ローマ字のV(ヴイ) | U+0056 |
W | W | ローマ字のW(ダブリュー) | U+0057 |
X | X | ローマ字のX(エックス) | U+0058 |
Y | Y | ローマ字のY(ワイ) | U+0059 |
Z | S | ローマ字のS(エス) | U+0053 |
英小文字
元の形 | 反転後の形 | 反転後の形は本来どういう字か | Unicode |
---|---|---|---|
a | ɒ | IPAで円唇後舌広母音 | U+0252 |
a | 𐑇 | デザレット文字でshの音を表す(小文字) | U+10447 |
b | d | ローマ字のd(ディー) | U+0064 |
c | ɔ | IPAで円唇後舌半広母音 | U+0254 |
c | ↄ | かつてラテン語でPSの音を示すのに用いられた(小文字) | U+2184 |
d | b | ローマ字のb(ビー) | U+0062 |
e | ɘ | IPAで非円唇中舌半狭母音 | U+0258 | f | ʇ | 昔のIPAで歯吸着音 | U+0287 |
g | ჹ | グルジア文字の1つ | U+10F9 |
h | ત | グジャラーティー文字でtの音を表す | U+0AA4 |
i | i | ローマ字のi(アイ) | U+0069 |
j | ὶ | ギリシャ文字のι(イオタ)に重アクセント記号をつけたもの | U+1F76 |
k | ʞ | 昔のIPAで軟口蓋吸着音 | U+029E |
l | l | ローマ字のl(エル) | U+006C |
m | m | ローマ字のm(エム) | U+006D |
n | n | ローマ字のn(エヌ) | U+006E |
o | o | ローマ字のo(オー) | U+006F |
p | q | ローマ字のq(キュー) | U+0071 |
q | p | ローマ字のp(ピー) | U+0070 |
r | ɿ | 漢語系の言語の音を表記するときに使用 | U+027F |
s | ƨ | 1957年のチワン語アルファベットで第2声調を表す | U+01A8 |
t | t | ローマ字のt(ティー) | U+0074 |
t | ᚾ | ルーン文字の1つ | U+16BE |
u | u | ローマ字のu(ユー) | U+0075 |
v | v | ローマ字のv(ヴイ) | U+0076 |
w | w | ローマ字のw(ダブリュー) | U+0077 |
x | x | ローマ字のx(エックス) | U+0078 |
y | ᚴ | ルーン文字の1つ | U+16B4 |
y | ჸ | グルジア文字の1つ | U+10F8 |
z | s | ローマ字のs(エス) | U+0073 |
数字、句読点等
元の形 | 反転後の形 | 反転後の形は本来どういう字か | Unicode |
---|---|---|---|
0 | 0 | アラビア数字の0(零) | U+0030 |
1 | 1 | アラビア数字の1(一) | U+0031 |
1 | ߁ | ンコ文字の1(一) | U+07C1 |
1 | ᛚ | ルーン文字の1つ | U+16DA |
2 | ؟ | アラビア語の疑問符 | U+061F |
2 | S | ローマ字のs(エス) | U+0073 |
3 | ε | ギリシャ文字のε(イプシロン、小文字) | U+03B5 |
3 | Ɛ | IPAで非円唇前舌半広母音 | U+0190 |
4 | ߂ | ンコ文字の2(二) | U+07C2 |
5 | ㄛ | 注音符号でoを表す | U+311B |
5 | ཊ | チベット文字の1つ | U+0F4A |
6 | ߥ | ンコ文字でwの音を表す | U+07E5 |
6 | ∂ | 偏微分の記号 | U+2202 |
7 | ߖ | ンコ文字でd͡ʒの音を表す | U+07D6 |
7 | ٢ | インド数字の2(アラビア語などで使用) | U+0662 |
8 | 8 | アラビア数字の8(八) | U+0038 |
9 | e | ローマ字のe(イー) | U+0065 |
9 | p | ローマ字のp(ピー) | U+0070 |
9 | ρ | ギリシャ文字のρ(ロー、小文字) | U+03C1 |
. | . | ピリオド | U+002E |
, | ◟ | 幾何学模様の1つ(左下側の4分の1の弧) | U+25DF |
, | ⸤ | 左括弧の下半分 | U+2E24 |
– | – | ハイフンマイナス | U+002D |
: | : | コロン | U+003A |
! | ! | 感嘆符 | U+0021 |
? | ؟ | アラビア語の疑問符 | U+061F |
? | ⸮ | 皮肉符(文末に置いて、文が皮肉や反語であることを示す) | U+2E2E |
付録1:TeXで文字を回転して表示する
TeXで鏡文字を作るのはとても簡単である。以下 [1] に示すように、graphicxパッケージを読み込んだ上で、\reflectboxを使えば良い。
\documentclass{article} \usepackage{graphicx} \begin{document} \reflectbox{Mirror Text!} \end{document}
出力結果は以下のようになる。

TeX の要素として使えるものなら大体反転できるはずである。日本語の文字も問題なく反転できる。
付録2:CSSで文字を反転して表示する
ウェブページで鏡文字を使いたければ、CSS3のtransformプロパティを使うのが良いだろう。最近のブラウザならちゃんと鏡文字になるはずである。Internet Explorerの8以前やFirefoxの3以前といった古いブラウザ [2] ではうまくいかない。
まず、CSSで以下のような記述をしておく。2013年初めの状況では、ベンダープレフィックスをつけたものもちゃんと入れておいた方が良い。
.mirror-text { -moz-transform:matrix(-1, 0, 0, 1, 0, 0); -webkit-transform:matrix(-1, 0, 0, 1, 0, 0); -o-transform:matrix(-1, 0, 0, 1, 0, 0); -ms-transform:matrix(-1, 0, 0, 1, 0, 0); transform:matrix(-1, 0, 0, 1, 0, 0); }
あとは、HTMLで以下のように記せばそれが反転して鏡文字のようになる。
<p class="mirror-text">これが鏡文字になります</p>
- 以下の例では、documentclass を article としているが、日本語を使いたければ適宜 jarticle などに変更すること [↩]
- transformプロパティの対応状況については、“Can I use CSS3 Transforms?/transforms2d”を参照。 [↩]