どうやって180度回転するか
“twitter”を“ɹəʇʇɪʍʇ”に、“7-11”を“⇂⇂-L”にするように、英数字を180度回転させて面白おかしく見せるという遊びがある。これは、英数字をひっくり返した形とよく似た文字を使っている。例えば、“M”を実際にひっくり返すかわりに、これをひっくり返した形によく似ている“W”を用いるのである。
自分でひっくり返した形を見つけるのは面倒だろう。だが、簡単に180度回転ができるウェブサービスが提供されており、これを使えばすぐにひっくり返してみせることができる。また、この記事に、英数字をひっくり返した形とよく似た文字の一覧を付けたので参考にしていただければ幸いである。
なお、ひっくり返した形とよく似た文字を使うのは、あくまでもお遊び [1] である。真面目な目的 [2] があって文字を180度回転させたいのなら、別の方法を用いるべきである。例えば、この記事の末尾にTeXを使って文字を回転させる事例を挙げたので参照されたい。
自動的に180度回転を行うウェブサービス
英数字を180度回転して表示できるウェブサービスを2つ紹介しよう。これらのウェブサービスを使うと、簡単に“twitter”を“ɹəʇʇɪʍʇ”のように改めることができる。いずれも英語で書かれているウェブサイトだが、入力欄に英数字を入れれば良いだけなので、英語が分からなくても問題なく使えるだろう。
180度回転した出力は各サービスで微妙に異なる。例えば、以下の英大文字・英小文字・数字・句読点を変換してみる。
ABCDEFGHIJKLM
NOPQRSTUVWXYZ
abcdefghijklm
nopqrstuvwxyz
0123456789
.,-:!?&
Rot180 encorderの場合、次のように出力される。(2013年1月26日:誤字修正)
⅋¿¡:-‘˙
68L9ᔕ⇁⃓εჷ⃓,0
zʎxʍʌnʇsɹbdou
ɯƮʞſ̣ᴉɥɓɟǝpɔqɐ
Z⅄XMΛᑎ⊥SȢԾdON
Ɯ⅂丬ſ̲IH⅁ℲƎpƆϴᏌ
Lunicodeの場合、次のように出力される。
⅋¿¡:-‘˙
68ㄥ9ގㄣƐᄅ⇂0
zʎxʍʌnʇsɹbdou
ɯlʞɾıɥɓɟǝpɔqɐ
Z⅄XMΛ∩⊥SᴚΌԀON
W˥⋊ſIH⅁ℲƎᗡƆᙠ∀
各々納得のいく回転とそうでない回転があると思う。両者の結果を合わせたり、以下に記す英数字を180度回転した例の表を参考にしたりしながら、自分が好きな組み合わせにすれば良いだろう。
英数字を180度回転した例
以下では、個別の英数字を180度回転した形と合致あるいは類似する文字を紹介する。1つの文字に対して複数の候補を挙げた場合もある。
表中で難しい用語はWikipedia日本語版にリンクを貼ってあるので、そちらの説明を参考にしていただきたい。なお、表中にあるIPAとは、国際音声記号 (International Phonetic Alphabet) のことである。(2013年2月2日追記:表の誤字を訂正し、表に若干の文字を追加した。)
英大文字
元の形 | 回転後の形 | 回転後の形は本来どういう字か | Unicode |
---|---|---|---|
A | ∀ | 論理学などで全称量化子 | U+2200 |
A | ᗄ | カナダ先住民文字の1つ | U+15C4 |
B | ᗺ | カナダ先住民文字の1つ | U+15FA |
C | Ↄ | アンチシグマと呼ばれ、かつてラテン語でPSの音を示すのに用いられた(大文字) | U+2183 |
C | Ɔ | アフリカの言語の表記に用いられることがある | U+0186 |
D | ᗡ | カナダ先住民文字の1つ | U+15E1 |
E | ∃ | 論理学などで存在量化子 | U+2203 |
E | ヨ | カタカナのヨ(よ) | U+30E8 |
E | ョ | 小書きのカタカナのョ(ょ) | U+30E7 |
E | Ǝ | パンナイジェリア文字で使用 | U+018E |
F | Ⅎ | ディガンマ・インウェルスムと呼ばれ、かつてラテン語でWの音を示すのに用いられた(大文字) | U+2132 |
F | ⅎ | ディガンマ・インウェルスムと呼ばれ、かつてラテン語でWの音を示すのに用いられた(小文字) | U+214E |
F | ᖵ | カナダ先住民文字の1つ | U+15B5 |
G | ⅁ | グルジア文字のჹをローマ字に転写するときに使用 | U+2141 |
H | H | ローマ字のH(エッチ) | U+0048 |
I | I | ローマ字のI(アイ) | U+0049 |
J | ɾ | IPAで歯茎はじき音 | U+027E |
J | Ր | アルメニア文字のՐ(レー、大文字) | U+0550 |
J | ſ | ローマ字の長いs(エス) | U+017F |
J | ᒋ | カナダ先住民文字の1つ | U+148B |
K | 丬 | 「壮」や「将」といった漢字の部首で、「しょうへん」と呼ばれる | U+4E2C |
L | ⅂ | 用法不明 | U+2142 |
L | Ꞁ | リス語を表記するフレイザー文字で非円唇後舌狭母音を表す | U+A780 |
L | ᒣ | カナダ先住民文字の1つ | U+14A3 |
M | W | ローマ字のW(ダブリュー) | U+0057 |
N | N | ローマ字のN(エヌ) | U+004E |
O | O | ローマ字のO(オー) | U+004F |
P | d | ローマ字のd(ディー) | U+0064 |
P | Ԁ | かつてコミ語を表記するキリル文字で使用(大文字) | U+0500 |
Q | Ό | ギリシャ文字のΟ(オミクロン)に鋭アクセント記号をつけたもの | U+038C |
R | ᴚ | 昔のIPAで無声口蓋垂摩擦音 | U+1D1A |
R | ᖈ | カナダ先住民文字の1つ | U+1588 |
S | S | ローマ字のS(エス) | U+0053 |
T | ⊥ | 垂直記号 | U+22A5 |
T | ⏊ | 歯科表記記号の1つ | U+23CA |
U | ∩ | 集合の積 | U+2229 |
U | Ո | アルメニア文字の(ヴォー、大文字) | U+0548 |
U | ᑎ | カナダ先住民文字の1つ | U+144E |
V | Λ | ギリシャ文字のΛ(ラムダ、大文字) | U+039B |
V | ᐱ | カナダ先住民文字の1つ | U+1431 |
V | ៱ | クメール易学用数字記号で1を表す | U+17F1 |
W | M | ローマ字のM(エム) | U+004D |
W | ៳ | クメール易学用数字記号で3を表す | U+17F3 |
X | X | ローマ字のx(エックス) | U+0058 |
Y | ⅄ | 用法不明 | U+2144 |
Z | Z | ローマ字のZ(ゼット) | U+005A |
英小文字
元の形 | 回転後の形 | 回転後の形は本来どういう字か | Unicode |
---|---|---|---|
a | ɐ | IPAで中舌狭めの広母音 | U+0250 |
b | q | ローマ字のq(キュー) | U+0071 |
c | ɔ | IPAで円唇後舌半広母音 | U+0254 |
c | ↄ | かつてラテン語でPSの音を示すのに用いられた(小文字) | U+2184 |
d | p | ローマ字のp(ピー) | U+0070 |
e | ə | IPAで非円唇中舌中央母音 | U+0259 |
f | ɟ | IPAで有声硬口蓋破裂音 | U+025F |
g | ɓ | IPAで両唇入破音 | U+0253 |
g | б | キリル文字のб(ベー、小文字) | U+0431 |
g | ᵷ | グルジア文字のჹをローマ字に転写するときに使用 | U+1D77 |
h | ɥ | IPAで有声両唇硬口蓋接近音 | U+0265 |
i | ɪ | IPAで非円唇前舌広めの狭母音 | U+026A |
i | ! | 感嘆符 | U+0021 |
i | ı | トルコ語で非円唇後舌狭母音を表す | U+0131 |
i | Ị | ベトナム語でIに声調記号をつけたもの | U+1ECA |
i | ᴉ | ウラル語族の言語の音を表記するときに使用 | U+1D09 |
j | ɾ | IPAで歯茎はじき音 | U+027E |
j | ſ | ローマ字の長いs(エス) | U+017F |
k | ʞ | 昔のIPAで軟口蓋吸着音 | U+029E |
l | l | ローマ字のl(エル) | U+006C |
l | ꞁ | かつてウェールズ語の無声側面摩擦音を表した | U+A781 |
m | ɯ | IPAで非円唇後舌狭母音 | U+026F |
m | ա | アルメニア文字の(アイブ、小文字) | U+0561 |
n | u | ローマ字のu(ユー) | U+0075 |
o | o | ローマ字のo(オー) | U+006F |
p | d | ローマ字のd(ディー) | U+0064 |
q | b | ローマ字のb(ビー) | U+0062 |
r | ɹ | IPAで歯茎接近音 | U+0279 |
r | Ꮧ | チェロキー文字でdiの音を表す | U+13D7 |
s | s | ローマ字のs(エス) | U+0073 |
t | ʇ | 昔のIPAで歯吸着音 | U+0287 |
u | n | ローマ字のn(エヌ) | U+006E |
v | ʌ | IPAで非円唇後舌半広母音 | U+028C |
v | Ꮩ | チェロキー文字でdoの音を表す | U+13D9 |
w | ʍ | IPAで無声両唇軟口蓋摩擦音 | U+028D |
x | x | ローマ字のx(エックス) | U+0078 |
y | ʎ | IPAで硬口蓋側面接近音 | U+028E |
z | z | ローマ字のz(ゼット) | U+007A |
数字、句読点等
元の形 | 回転後の形 | 回転後の形は本来どういう字か | Unicode |
---|---|---|---|
0 | 0 | アラビア数字の0(零) | U+0030 |
1 | 1 | アラビア数字の1(一) | U+0031 |
1 | ⇂ | 下向きの矢印 | U+21C2 |
2 | 2 | アラビア数字の2(二) | U+0032 |
2 | Ƨ | 1957年のチワン語アルファベットで第2声調を表す | U+01A7 |
2 | ᘔ | カナダ先住民文字の1つ | U+1614 |
2 | ㄹ | ハングルのㄹ(リウル) | U+3139 |
3 | ε | ギリシャ文字のε(イプシロン、小文字) | U+03B5 |
4 | ܛ | シリア文字のܛ(テット、基本形) | U+071B |
4 | ߈ | ンコ文字の8(八) | U+07C8 |
5 | 5 | アラビア数字の5(五) | U+0035 |
5 | S | ローマ字のS(エス) | U+0053 |
6 | 9 | アラビア数字の9(九) | U+0039 |
7 | L | ローマ字のL(エル) | U+004C |
7 | ㄥ | 注音符号でengを表す | U+3125 |
8 | 8 | アラビア数字の8(八) | U+0038 |
9 | 6 | アラビア数字の6(六) | U+0036 |
. | ˙ | 上ドット | U+02D9 |
, | ‘ | アポストロフィ | U+0027 |
, | ‘ | 左シングル引用符 | U+2018 |
– | – | ハイフンマイナス | U+002D |
: | : | コロン | U+003A |
; | ؛ | アラビア語のセミコロン | U+061B |
! | ¡ | 逆感嘆符(スペイン語などで使用) | U+00A1 |
? | ¿ | 逆疑問符(スペイン語などで使用) | U+00BF |
& | ⅋ | 乗法的論理和 | U+214B |
付録:TeXで文字を回転して表示する
TeXで文字をひっくり返して表示することはとても簡単である。以下 [3] に示すように、graphicxパッケージを読み込んだ上で、\rotateboxを使えば良い。なお、origin=c は文字列の中心を回転の中心とすることを意味する。また、180 は回転する角度を指定している。
\documentclass{article} \usepackage{graphicx} \begin{document} \rotatebox[origin=c]{180}{Upside Down!} \end{document}
出力結果は以下のようになる。
TeX の要素として使えるものなら大体回転できるはずである。日本語の文字も問題なく回転できる。
なお、これより詳しい説明を「TeXで文字を180度回転する方法」というPDFファイルに書いたので参考にしていただければ幸いである。