“Amoing torans only” の謎

概要
渋谷駅構内の “Amoing torans only” という良く分からない英語が書いてある看板について。

看板の謎の言葉

2018年の1月に東京の渋谷駅に行ったとき、以下の写真に示す看板があった。

東京の渋谷駅構内の看板(2018年1月撮影)。上段には「この階段は降車専用です」とあり、下段1行目には“<em>No bouding port the plantform</em>”、2行目に“<em>Amoing torans only</em>” と記されている。
東京の渋谷駅構内の看板(2018年1月撮影)。上段には「この階段は降車専用です」とあり、下段1行目には“No bouding port the plantform”、2行目に“Amoing torans only” と記されている。

日本語で書かれている「この階段は降車専用です」の意味は良く分かる。しかし、その下にラテン文字で書かれているものが良く分からない。駅での案内の掲示では日本語と英語を併記するのが普通であるし、“the” や “only” といった英単語が記されているから、下段は英語を書いているつもりなのだろう。しかし、“Amoing” や “torans” という英単語はないし、全般的に何を言っているのか見当がつかない。全くの謎である。

看板が示したかったもの

これは一体何を示したかったのだろうか。ナイトトレインの平成・徒然草というブログの「昭和の遺構(番外編2) 渋谷駅連絡通路」(2012年2月2日付)という記事に、その答えがあった。

渋谷駅は2013年の東横線ホーム移転以降、かなり大規模な改良工事が行われている。「昭和の遺構(番外編2) 渋谷駅連絡通路」という記事には、この改良工事が始まる前の渋谷駅構内の写真が色々と載っており、その中に「この階段は降車専用です」を示す看板を写した写真もある。これを確認すると、元々の看板の上段には「この階段は降車専用です」、下段1行目には“No boarding from this platform.”、2行目に“Arriving trains only” と記されていたことが分かる。

No boarding from this platform. Arriving trains only.” が “No bouding port the plantform Amoing torans only” になったのだ。元々の看板を写して新しい看板を作ったのだろうが、おそらく新しい看板の作成にたずさわった人が英語に明るくなく、良く分からずに文字を並べてしまったのだろう。

“Arriving” が “Amoing” になるのはなかなかの驚きだが、おそらくは英語を手書きしたときに rri が重なって m のようになってしまったのだと思う。

Arriving が Amoing になってしまった過程としてありうる仮説。
Arriving が Amoing になってしまった過程としてありうる仮説。

看板を作るのに関わった人の中で英語がちゃんと分かる人がいれば、“Amoing” はおかしいと気づいていただろう。しかし、実際にはそうではなく、他にも色々な誤りが積み重なり、わけの分からない看板となってしまったのだろう。

東京の渋谷駅構内の掲示(2018年1月撮影)。上述の看板の付近にあり、ほぼ同じ英語の誤りが起きている。
東京の渋谷駅構内の掲示(2018年1月撮影)。上述の看板の付近にあり、ほぼ同じ英語の誤りが起きている。

こんな感じで “Amoing torans only” の謎はとけた。めでたしめでたし――と言いたいところだが、渋谷駅という外国人観光客が多い駅で、こんなわけの分からない英語の看板が出てしまうのは、それはそれでめでたくないというか、逆にものすごくオメデタい話である。おあとがよろしいようで。

追記:看板の修正

この節は、2018年2月28日に追記したものである。

この記事を書いたあとに、東京メトロお客様センターにこの看板の問題について連絡した。迅速に対応してくれ、連絡した数日後には以下のように正しいものに直されていた。

東京の渋谷駅構内の看板(2018年2月27日撮影)。英語の部分が正しいものに直されている。
東京の渋谷駅構内の看板(2018年2月27日撮影)。英語の部分が正しいものに直されている。

やはり正解は、“No boarding from this platform. Arriving trains only.” だった。