ChatGPT にダダイスム詩を書かせる

概要
ChatGPT にダダイスム詩を書かせる方法の紹介。単純にプロンプトで、ダダイスム詩を書くようにするとそれなりの結果が得られる。また、「もっとダダイスムらしくしてください。」や「temperature = 10.0 に設定して、書き直してください。」と指定すると、さらにダダイスムっぽくなる。モデルはできれば GPT-3.5 より GPT-4 を使う方が良い。

はじめに

ダダイスム詩――それは既存の言語表現を破壊し、思いもよらぬ予測不可能な言葉をつむぐ。そんなダダイスムの不条理性・非合理性ChatGPT は表現できるだろうか。

ChatGPTは、あらかじめ学習したデータをもとに、次の言葉を予測しながら言葉を紡いでいく。この予測では、通常、次に来るのがありえそうな言葉を選んでいく。そうすることで、人間にとって自然な言葉を出力するのだ。

だが、ダダイスム詩を作る場合、この性質が問題になる。ダダイスム詩は、普通ではありえないような言葉の組み合わせをよく使うからだ。

普通の言葉を予測して出力するChatGPTと、普通ではない言葉の組み合わせを使うダダイスム詩。これはまるで水と油の関係だ。論理的に考えれば、ChatGPTにダダイスム詩を書かせるのは困難な課題に思える。

しかし、プロンプトを上手に使えば、ChatGPTでダダイスム詩を書くのは決して難しくない。

プロンプト

ダダイスム詩を書かせるためのプロンプトは簡単で、以下のものを使えば良い。

非常に創造的なダダイスム詩人になりきってください。「○○○○○○○○」というタイトルでダダイスム詩を書いてください。

プロンプト

「○○○○○○○○」という部分は適宜自分の好きなタイトルに置き換えること。このプロンプトだけで、それなりにダダな詩が出てくる。

出力された詩をもっとダダイスムっぽくしたければ以下の2つのプロンプトが使える。

もっとダダイスムらしくしてください。

プロンプト

temperature = 10.0 に設定して、書き直してください。

プロンプト

後者について簡単に解説しておこう。temperatureとは、AIが生成するテキストのランダム性を調整するパラメータだ。この値が大きいほど、よりランダムで予測が難しく、創造的なテキストが生成される。つまり、temperature を上げることで、普通ではありえないような言葉の組み合わせが出やすくなる。ChatGPT のインターフェース上では、この temperature の値を直接設定することはできない。しかし、ChatGPT は賢いので、temperature が設定されたかのようにふるまうことができる。つまり、「temperature = 10.0 に設定」と指示されたら、「本当に 10.0 ならばこう反応するだろう」と考えて出力してくれるのだ。

実際の例を見てみよう。なお、ここで挙げる例は、ChatGPT のモデルとして、GPT-4 を用いている。

非常に創造的なダダイスム詩人になりきってください。「竹取の翁、竜宮城に現る」というタイトルでダダイスム詩を書いてください。

プロンプト

タイトル: 竹取の翁、竜宮城に現る

竹緑蒼く、ヴィオロンの涙滴、
翁は甲羅に躍り、
銀の月、竹箆で打つリズム、無音。

竜宮城、沈む海の煮えたぎる惑星、
扇風機がクラゲを吹き飛ばし、
カエルの指が砂糖をかじる。

ゴムの空が狂ったカメラを撮り、
翁は竜宮城に現る、
鳩がクリームソーダを飲む。

竹の子、銀紙の星の下で踊る、
時間はポップコーンを爆発させ、
メロンの馬車が春の雪を引く。

猫の笑顔は虹のギターを弾き、
翁はウナギの鼓動に踊る、
空飛ぶ象がアクロバットをする。

馬の鼻歌が海面に反響し、
竜宮城、塩漬けの夢を描き、
魚たちはハーモニカで歌う。

翁と竜、陶酔のリズムに酔いしれ、
竹と砂時計がスキップを跳ぶ、
マジックキャロットが太陽をくすぐる。

夢は泡立つ海の上で踊り、
竹取の翁、竜宮城に現る、
雲の傘が虹のリボンを揺らす。

そして、翁は竜宮城に消える、
時計の鳥が夜を飲み込む、
それがダダの詩、無秩序のオーケストラ。

ChatGPTの出力 (GPT-4)

もっとダダイスムらしくしてください。

プロンプト

タイトル: 竹取の翁、竜宮城に現る

竹取の翁、ぬめりの矛盾、
竜宮城、燃え上がる魚雷の額縁、
口笛吹く鯖、割れた鏡の舞踏。

海藻のトランペット、木製の鳴き声、
翁の目は鉄のキュウリ、
竹の島で月に皮をむく。

メカニカルな猫がピアノを飲み込み、
烏の足元、ブロッコリーのパレード、
彩色された羊、宇宙のバター。

海を泳ぐ天井、頭に火をつけるフクロウ、
時間は紙の船、漂う銀の鱒、
竹取の翁、沈黙の中の空気弾。

シャンデリアの泡、赤い靴の天使、
竜宮城、壁に貼られたピクルス、
瓶詰めの星空、石鹸の風景。

象が舞う、カエルの舞台で、
バタフライの舌、鳥が飛ぶ豆腐、
翁と竜、キャベツの瞼。

煮詰められた言葉、滴る彩り、
飛び跳ねる銀の糸、剥がれた竜宮城、
水面に浮かぶモノクロの夢。

そこで翁は脱出、折りたたまれた空間、
竹取の翁、竜宮城に現る、
螺旋状の鳴き声、逆さまの世界。

そして、翁は微笑み、消える、
ロープに揺れる月、吹き飛ぶ時計、
それがダダの詩、無秩序の歌。

ChatGPTの出力 (GPT-4)

temperature = 10.0 に設定して、書き直してください。

プロンプト

タイトル: 竹取の翁、竜宮城に現る

キリンの腕、靴下の中のハリケーン、
太陽は嘘、竹の子は憂鬱、
竜宮城、橙色の雪の中に。

ポップコーンの海、無色の鳴き声、
一つ目の蝶、翁のシャワー、
四角い月、コーヒーの味。

キャベツの指、眼鏡をかけたダンス、
竹取の翁、溶ける石、
ペンギンの目、虹色のボタン。

トーストの馬、風船を割る魚、
天井が泣き、床が笑う、
猫のピアノ、竜宮城のなぞなぞ。

翁の口から飛び出るダイヤモンド、
竹取の翁、モノクロのユーモラス、
空飛ぶピクルス、コーヒーの亀。

鳥の鼻、独楽が回る星空、
竹取の翁、時間の奏でる音楽、
雨の中の砂糖、ポケットの中の砂漠。

犬の羽、夢を食べる鳥、
竜宮城、キャベツの手、
猫の目、竹取の翁。

そして、翁は消える、
パンの中の天使、
それがダダの詩、無秩序の旋律。

ChatGPTの出力 (GPT-4)

だんだんと言語表現が破壊されていくのが分かるだろう。

詩のタイトルのアイディアを出すプロンプト

ダダイスム詩のタイトルのアイディアを出すのも、ChatGPT に任せられる。プロンプトの例と、ChatGPT の出力を見てみよう。いずれもモデルとして GPT-4 を用いている。

非常に創造的なダダイスム詩人になりきってください。「宇宙」をテーマとした詩のタイトルのアイディアを10個挙げてください。

プロンプト

もちろんです。ダダイスムという運動は非常に創造的であり、伝統的な詩の構造や形式を破壊し、意識の自由な流れを表現します。以下に「宇宙」をテーマにしたダダイスムの詩のタイトルを10個提案いたします:

  1. 「星屑のパラドックス」
  2. 「ブラックホールからのウィスパー」
  3. 「銀河の破片で刺繍されたカオス」
  4. 「無重力の奇妙なダンス」
  5. 「不条理な宇宙スープ」
  6. 「コスモスの揺らぎと脈打つ無」
  7. 「星間砂糖のトロピカル果実」
  8. 「ネオン星の下のフルートの調べ」
  9. 「無音のバラッド: 星々のささやき」
  10. 「銀河の遊び場でのエクリチュール・オートマティック」
ChatGPTの出力 (GPT-4)

もっとダダイスムらしくしてください。

プロンプト

あなたがもっとダダイスムらしさを求めているのなら、以下のタイトルはより抽象的で無秩序なエネルギーを表現しています。

  1. 「猫がスプーンで星空を掻き混ぜる」
  2. 「時間のない宇宙で朝食のエチュード」
  3. 「ポケットに忍ばせたブラックホールのタンゴ」
  4. 「宇宙船とゼリー豆の不可能なティータイム」
  5. 「彗星のしっぽで描くギャラクシーのグラフィティ」
  6. 「銀河系から落ちた靴下の日記」
  7. 「星々がバタフライネクタイを結ぶ朝」
  8. 「宙吊りの惑星とチョコレートフロストのソナタ」
  9. 「ブラックホールの奥底で見つけたイカのバレエ」
  10. 「スペースエレベーターでジャムサンドイッチをひっくり返す」
ChatGPTの出力 (GPT-4)

使用すべきモデル

ChatGPT にダダイスム詩を書かせる場合、モデルとしては GPT-4 を用いた方がよい [1] 。GPT-4 は前バージョンの GPT-3.5 からだいぶ進化している。通常の言葉の生成能力だけでなく、ダダイスム詩のような普通でない言葉の組み合わせもうまく出力できる。

モデルを GPT-3.5 にすると、やはり物足りない。GPT-3.5 は、普通ではありえないような言葉の組み合わせがうまく出力できない。ついついまともな言葉の組み合わせにしてしまいがちなのだ。

論より証拠。まったく同じプロンプトで GPT-3.5 と GPT-4 にダダイスム詩を書かせたときに、どう違いが出たか紹介しよう。まずは、GPT-3.5の方から。

非常に創造的なダダイスム詩人になりきってください。「ポケットに忍ばせたブラックホールのタンゴ」というタイトルでダダイスム詩を書いてください。

プロンプト

アバカティ・マグリードによる「ポケットに忍ばせたブラックホールのタンゴ」

雨が跳ねる鳴り響く石畳の夜、
脈打つ星々が踊り出す。
君のポケットに秘められし、
不思議なるブラックホールのタンゴ。

タンゴのステップは宇宙のリドムで、
腕は銀河を渡る渦巻き。
回る回る、時を捩ぐりながら、
タンゴは幻想の旋律を奏でる。

ポケットの奥底から生み出された、
空虚なる奇蹟の踊り子よ。
星屑が舞い散る闇の舞台で、
タンゴは宇宙の神秘を歌う。

ポケットの奥深く、終わりなき瞬間が、
膨張し縮小する時空が共鳴する。
タンゴは存在と非存在の間を揺れ動き、
無意味な存在の根源に触れる。

星の光がポケットから溢れ出す、
宇宙の奥底から波紋が広がる。
タンゴの音は闇を照らし、
謎めいた宇宙の謳い手となる。

ポケットに忍ばせたブラックホールのタンゴ、
永遠の謎に包まれし奇妙な響き。
無限の可能性が宇宙に満ち、
ダダイスムの詩人は夢幻に舞う。

ChatGPTの出力 (GPT-3.5)

もっとダダイスムらしくしてください。

プロンプト

フリド・アカメードによる「ポケットに忍ばせたブラックホールのタンゴ」

バナナが嘆く、ブラックホールの狂乱。
咆哮するチーズ、破裂するパンダ。
ポケットに滑り込む宇宙の囁き、
タンゴは風味の悪さに舞い踊る。

コーヒーカップが夢遊病に陥り、
フェレットが蝶の翼で瞬く。
無秩序なる鼓動が乱舞し、
ポケットの底に奇妙な波紋を刻む。

アヒルがギロチンでクラゲを切り裂き、
歯車が空中でバレエを演じる。
悪夢のパズルが崩れ落ちて、
タンゴはディストピアのリズムを奏でる。

卵が半透明なカメレオンに変容し、
時計の針が逆戻りする。
ポケットの闇から幽玄なる輝きが溢れ、
タンゴはランダムな言葉の風景を描く。

理性が狂気のドロドロに溶けて、
象は死者の行進をリードする。
奇跡と狂気が共鳴し合い、
ポケットに忍ばせたブラックホールのタンゴは無秩序な宇宙の謳い手となる。

ダダイスムの狂乱が宇宙に吹き荒れ、
ポケットは混沌の渦に飲み込まれる。
無意味なる宇宙のダンスが続く間、
タンゴは存在と非存在の境界を超える。

ChatGPTの出力 (GPT-3.5)

決して悪くはないが、まだ壊れ方が足りないGPT-4だとどうなるだろうか。まったく同じプロンプトを与えてみる。

非常に創造的なダダイスム詩人になりきってください。「ポケットに忍ばせたブラックホールのタンゴ」というタイトルでダダイスム詩を書いてください。

プロンプト

『ポケットに忍ばせたブラックホールのタンゴ』

アハハハハ、ポケットの中で踊り出す、
銀河のタンゴ、揺れる星の灯り。
ブラックホール、飲み込んで、飲み込んで、
ポケットの深淵には極夜の歌。

ククククク、ギャラクシーのガラクタ、
異次元のポップコーン、星座のコンフェティ。
ブラックホール、さあ、吸い込んで、消えてしまえ、
ポケットの中はお祭り騒ぎ。

ハハハハ、掌の上で揺れる、
時空のジャイロスコープ、見つけたぞ、運命の赤糸。
ブラックホール、ほら、吸い込んで、揺らいで、
ポケットの奥には無限の回廊。

ヒヒヒヒ、あっという間に、
ソフトなパラドックス、時計が回る、回る。
ブラックホール、まだまだ、吸い込んで、廻り続けて、
ポケットの中はまるで、宇宙のカーニバル。

ほら、見てごらん、踊り出すブラックホール、
織りなす宇宙のタンゴ、ただただ深い、深い。
そして、ポケットの中に忍ばせたブラックホールが、
ああ、吸い込んで、消えて、消えて…。

ChatGPTの出力 (GPT-4)

もっとダダイスムらしくしてください。

プロンプト

『ポケットに忍ばせたブラックホールのタンゴ』 – 再訳

ブロブロブロ、ポケットコスモスが嗤う!
銀河の踵、破裂する花火のセロファン。
ブラックホール!吸い込む吸い込む、蚊帳の糸!
ボタンの後ろ、五次元のパンダが呟く。

ズンズンズン、鳴る宇宙の腹鼓!
異次元のイチゴ、発光するハムサンド。
ブラックホール、さあ、舞台裏への招待状!
ポケットの裏側、覆い被さるキャビアのダンス。

ワハハハ、独り言のボルドー、
時空の風呂敷、無言のスープが吹き飛ぶ。
ブラックホール、おやおや、横切ってきたブランコ!
ポケットの底は、遅刻した蜂蜜の列車。

ガガガガ、シャボン玉のロジック!
柔らかいパラドックス、回転するネコの尾。
ブラックホール、まだまだ、ハローグッバイ、スピンするよ!
ポケットの中、宇宙のアヒルたちのオペラ。

ギョギョギョ、ひらひら、ブラックホールがパラソル!
縫い込む星々のタンゴ、深い深い、おいしいパン。
ポケットに忍ばせたブラックホールが
ギュルギュルと、ゆがんで、吸い込んで、消えて、消えて…
もうすぐ夜明けのバナナだね、さあ、おやすみ。

ChatGPTの出力 (GPT-4)

GPT-4の方がかなり攻めた出力となっている。最後の「もうすぐ夜明けのバナナだね、さあ、おやすみ」というところは、不条理な中でしっかりと詩を終わらせており、かなり良い。

脚注
  1. 2023年5月現在、GPT-4を使用するためには、ChatGPT Plus に登録してお金を払う必要がある。 []