「丹」の旧字体
戦前の日本の明朝体活字(以下、旧字体)での「丹」という字の字形について触れたい。旧字体では、以下の画像に示すように、「丹」の囲まれた部分の中を点にする場合(画像左側)と縦棒にする場合(画像右側)があった。中を点にする場合の字形は、現代の日本で広く使われる字形と同じである。
旧字体において「丹」は、中を点にする場合(左側)と縦棒にする場合(右側)がある。左側の字形は現代の日本で広く使われる「丹」の字形と同じである。
中を点にする場合
旧字体の「丹」の実例をいくつか見てみよう。まずは、中を点にする場合の例を2つ挙げる。
「丹」の字の囲まれた部分を点にする活字の例 ((岡本一平.(1930). 『愛の種々相』東京:先進社. p.122より。)) 。
「丹」の字の囲まれた部分を点にする活字の例 ((愛知県〔編〕.(1923). 『愛知県史蹟名勝天然紀念物調査報告 第一』名古屋:愛知県. p.44より。)) 。
中を縦棒にする場合
次に、中を縦棒にする例を3つ挙げよう。
「丹」の字の囲まれた部分を縦棒にする活字の例 ((東家小雀等〔講演〕.(1914). 『東家一門会』東京:三芳屋書店. p.150より。)) 。
「丹」の字の囲まれた部分を縦棒にする活字の例 ((医学中央雑誌刊行会.(1926). 『医学中央雑誌 第二十三巻第十八号』東京:医学中央雑誌刊行会. p.1292より。)) 。
「丹」の字の囲まれた部分を縦棒にする活字の例 ((沖野岩三郎.(1940). 『宛名印記』豊中:美術と趣味社. p.153より。)) 。
中間的な場合
また、中が点と縦棒を足して二で割ったような形の例も存在する。
「丹」の字の囲まれた部分の点が長くなって、下の横棒に付いている活字の例 ((河田楨.(1923). 『一日二日山の旅』東京:自彊館書店.p.11より。)) 。
「丹」の字の囲まれた部分の点が長くなって、上下の横棒に付いて、縦棒のように見える活字の例 ((水島彦一郎.(1937). 『有本国蔵翁』舞鶴:舞鶴町. p.123より。)) 。
手書きの字形
日本の手書きの字形としては、「丹」の字の中を点にしたものも縦棒にしたものも両方存在していた。手書きの字形が両方存在していたことが、明朝体の活字に2つの形が生じた原因であろう。
手書きの字形で、縦棒にした例を2つ挙げよう。
手書きで「丹」の字の囲まれた部分を縦棒にしている例 ((加藤悟堂〔編〕.(1888). 『愛知県丹羽葉栗郡村名習字本』愛知県開明村:一真堂.)) 。
手書きで「丹」の字の囲まれた部分を縦棒にしている例 ((宮本興晃.(1881). 『開化作文三体用文』東京:金松堂. p.11より。)) 。この例では縦棒がつきぬけている。
また、以下に挙げる『改正小学日本地誌略字引』という書籍では、「丹波」の「丹」は点にしているにも関わらず、同じ紙に書かれた「丹後」の「丹」は縦棒にしている。
「丹波」の「丹」の手書きの例 ((荒野文雄〔編〕.(1879).『改正小学日本地誌略字引』東京:荒野文雄. p.21より。)) 。ここでは点になっている。
「丹後」の「丹」の手書きの例 ((荒野文雄〔編〕.(1879).『改正小学日本地誌略字引』東京:荒野文雄. p.21より。)) 。ここでは縦棒になっている。
『康煕字典』と古漢字
『康煕字典』では、「丹」の字形は中が点になっている。つまり、現代の日本で広く使われる字形と同じである。
古漢字の例を見ると、中は点にしている。
甲骨文での「丹」 ((Wikimedia Commonsのパブリックドメイン画像を使用。)) 。
金文での「丹」 ((Wikimedia Commonsのパブリックドメイン画像を使用。)) 。
現代のコンピュータで「丹」の旧字体を使い分ける
Unicodeでは、異体字セレクタを用いることで、「丹」の中を点とする字形と縦棒にする字形を使い分けることができる。U+4E39 U+E0100 ならば、中を点とする「丹󠄀」となる。また、U+4E39 U+E0101 ならば、中を縦棒とする「丹󠄁」となる。
また、Adobe-Japan1-4以上に対応しているフォントならば、CID+2926で中を点とする「丹󠄀」が、CID+13914で中を縦棒とする「丹󠄁」が出てくる。