「うちは『いばらぎ』じゃありません」
「いばらぎ県」と言ったところ、茨城県出身者に「いばらき県です」と訂正されたことが何度かある。「茨城」は「いばらき」と最後が濁らない音になるのが正しい読みだ。だけれども、誤って「いばらぎ」だと思っている人は結構いる。何せ『いばらぎじゃなくていばらき』というタイトルの本が出たり [1] 、NHK連続テレビ小説で「『いばらぎ』じゃなくて、『いばらき』です」というセリフが出たり [2] するぐらいだ。
たった1画の違いだけど
似たような話が中国にもある。安徽省に“亳州”という市がある [3] 。この市の名前が誤って“毫州”とされることが多いらしい。“亳州”が正しくて、“毫州”が誤りだ。「えっ、正しいのも誤っているのも同じ漢字では?」と思う人もいるかもしれない。
だが、よく見てほしい。“亳”と“毫”は字形が少しだけ違う。前者は下の部分が“乇”になっているが、後者は“毛”になっている。余計に1画付いてしまっているのだ。
なお、この2つの字は、形はよく似ているが、発音は全然違う。“亳”は bó (ポー)で、“毫”は háo (ハオ)になる [4] 。“亳州”という地名は Bózhōu と読むべきであって、Háozhōu と読むべきではない。
“毫” (háo) は中国語では割とよく使う字だ。例えば、ミリメートルを示す“毫米”やミリリットルを示す“毫升”で用いられる。だが、“亳” (bó) はもっぱらこの地名を表すときにしか使われない。だから、よく使う“毫” (háo) についつい引きずられて、“毫州” (Háozhōu) にしてしまうのだと思う。
ちゃんとしたニュースサイトも間違える
中国共産党の機関紙『人民日報』がやっているニュースサイトの人民網にすら、“亳州” (Bózhōu) を誤って“毫州” (Háozhōu) と書いてしまっている例がある。以下にその誤りがあるニュース記事のキャプチャを掲げる。
この記事は、亳州市の共産党の書記が決まったという、まさに亳州市をメインテーマとした記事である。にもかかわらず、字を間違えてしまっている。
正しいものを使ってほしいというキャンペーン
このような状況に対して、「うちは“亳州” (Bózhōu) だ」ということを伝えるキャンペーンがあったらしい。キャンペーンをやったのは、亳州を本拠地とする古井集団という酒造業者。このキャンペーンは、ネット上でクイズに答え、正しく“亳州” (Bózhōu) だということが答えられれば、賞品が当たるというもの [7] [8] 。
間違える側はそんなに悪意はないんだろうけれども、間違われる側としては気になってしまうということなんだろう。
- 青木智也.(2004). 『いばらぎじゃなくていばらき』水戸:茨城新聞社. [↩]
- J-CASTニュース.(2017年4月14日).「「『いばらぎ』じゃなくて、『いばらき』です」 NHK「ひよっこ」セリフに茨城県民が感涙」https://www.j-cast.com/2017/04/14295656.html?p=all [↩]
- 亳州市は、安徽省の北部にある市で、河南省に接している。曹操の出身地でもある。 [↩]
- 日本漢字音では、亳は「ハク」、毫は「ゴウ」(旧仮名では「ガウ」になる)。 [↩]
- Wikimedia Commons より Croquet 氏の CC BY 3.0 画像を利用。 [↩]
- 人民网.(2016年4月11日).汪一光任安徽毫州市委书记 杜延安提名市长候选人 http://leaders.people.com.cn/n1/2016/0411/c58278-28265164.html 2017年7月16日閲覧. [↩]
- 新华网.(2016年02月21日).安徽亳州常被误读作毫州 读亳有奖. http://www.ah.xinhuanet.com/2016-02/21/c_1118107598.htm [↩]
- 王鹏英.(2016年2月23日).从读“亳”有奖看“博”爱古井.新华网. http://news.xinhuanet.com/food/2016-02/23/c_1118133400.htm [↩]