手のひらの中に日本語の宇宙を――『精選版 日本国語大辞典』アプリ

概要
iOS 用の『精選版 日本国語大辞典』アプリの紹介。非常にたくさんの項目・用例が収録されている上、検索が容易で、価格面でもかなり優秀である。

はじめに

iOS 用の『精選版 日本国語大辞典』アプリについて紹介したいと思う。このアプリは、日本語の語句の意味を調べるための電子辞書アプリであり、非常に多くの項目・用例が収録されている。

このアプリは、電子辞書ということで、紙の辞書に比べて引くのが容易になっている。また、紙の辞書に比べかなり安くなっている。

『精選版 日本国語大辞典』とは

今回紹介するアプリは、小学館が編んだ『精選版 日本国語大辞典』という紙の辞書を iOS 用のアプリにしたものだ。そもそもこの紙の『精選版 日本国語大辞典』はどのような辞書なのだろうか。

日本の国語辞典で最大のものとして『日本国語大辞典 第二版』というものがある。これは項目数50万、用例数100万をほこり、全体で14巻もある [1] 。この『日本国語大辞典 第二版』からよく使われる語句を精選した上で、若干の増補をほどこしてできあがったのが、紙の『精選版 日本国語大辞典』である。

紙の『精選版 日本国語大辞典』は全3巻。項目数30万、用例数30万である [2] 。現代語だけでなく、古語も載っている。また、語句の歴史的変遷を記した「語誌」も含まれている。

この紙の辞書を電子化して、iOS 上から使えるようにしたものが『精選版 日本国語大辞典』のアプリだ。日本語に関する膨大な項目を収めた辞書が、手のひらに収まるようになっている。比喩的に言えば、手のひらの中に日本語の宇宙を収めたようなアプリである。

なお、Android 用のアプリはない。ちなみに、電子辞書専用端末の中には『精選版 日本国語大辞典』を収めたものがいくつかある [3]

検索機能

紙の『精選版 日本国語大辞典』は合わせて3巻もあるため、場所を取る上に、語句を調べるのがかなり大変であった。しかし、電子化されたことにより、簡単に語句を調べることができるようになった。iPhone を使えば、ほんの数秒のうちに手のひらの中で調べることができるのだ。

このアプリでは、検索欄に調べたい語句を入れるだけで、簡単にその語句を引くことができる。読み仮名で入力しても検索されるし、漢字表記で入力しても検索される。例えば、「完全」という語句を調べたい場合、検索欄に「かんぜん」と入れても良いし、「完全」と入れても良い。

手書き入力

また、手書き入力機能も付いているため、読み方の分からない語句も検索することができる。例えば、「佞」の読み方が分からない場合、手書き入力欄に、指でその字を書けば、その字を入力することができる。

手書き入力機能を使って「佞」という字を出す。
手書き入力機能を使って「佞」という字を出す。

そうすると、「佞」から始まる語句が一覧で表示される。

手書き入力機能で入力された文字が検索欄に入り、「佞」から始まる項目が一覧として出てくる。
手書き入力機能で入力された文字が検索欄に入り、「佞」から始まる項目が一覧として出てくる。

インデックスから探す

とりとめもなく紙の辞書をめくるのが好きだという人もいるだろう。『精選版 日本国語大辞典』アプリには「インデックス」というメニューがあり、このメニューからとりとめもなく辞書の項目を見ることができる。

「インデックス」で表示されるもの。「五十音」順に見ることができるほか、「季語」や「慣用句・ことわざ」にしぼって見ることもできる。
「インデックス」で表示されるもの。「五十音」順に見ることができるほか、「季語」や「慣用句・ことわざ」にしぼって見ることもできる。

「インデックス」メニューの中には、「五十音」メニューがあり、そこから五十音順に並んだ見出し語のグリッドを見ることができる。例えば、「せ」から始まる見出し語のグリッドは次のように表示される。

「五十音」の中から「せ」を選ぶと、「せ」から始まる見出し語がグリッド上に表示される。
「五十音」の中から「せ」を選ぶと、「せ」から始まる見出し語がグリッド上に表示される。

このグリッドをスクロールしていくと、日本語の宇宙に没入できるだろう。

価格

『精選版 日本国語大辞典』を買ったら、iPad がおまけで付いてきました!

2017年7月9日現在、App Store での『精選版 日本国語大辞典』アプリの価格は7,800円(税込)。紙の『精選版 日本国語大辞典』が1セット48,600円(税込)なので、4万円以上安いことになる。かなりお得だ。

先ほど、このアプリは iOS 用のものしかなく、Android 用のものはないと書いた。だから、iPhone や iPad を持っていないとこのアプリは使えない。しかし、iPadで一番安いものは、40,824円(税込)に過ぎない。iPad とこのアプリを買っても、紙の『精選版 日本国語大辞典』1セットとほぼ同じ価格だ。

価格だけ見れば、「『精選版 日本国語大辞典』を買ったら、iPad がおまけで付いてきました!」と言えそうなぐらいだ。

使い道

私は、このアプリを前近代の日本語の文章を読むときによく使っている。こうした文章の中で分からない言葉が出てきたら、このアプリで調べる。先に触れたように、この辞書には多くの古語が載っているので、古い日本語の文章を読むときに便利なのだ。

また、紙の辞書だと引くのにかなり時間がかかってしまう。このことにより、文章を読むことが中断してしまう。これに対して、電子辞書はすぐに検索できるので、文章を読むときの流れが妨げられることは少ない。その意味でもこのアプリは便利である。

脚注
  1. ジャパンナレッジ.(n.d.). 「国語辞典の最高峰 『日本国語大辞典 第二版』の特色」http://japanknowledge.com/contents/nikkoku/book_second02.html 2017年7月9日閲覧. []
  2. ジャパンナレッジ.(n.d.). 「精選版の特色」http://japanknowledge.com/contents/nikkoku/book_seisen02.html 2017年7月9日閲覧. []
  3. 例えば、CASIOのXD-G20000には『精選版 日本国語大辞典』が収録されている。 []