はじめに
研究社が出している和英辞典で『新和英大辞典』というものがある。この本は、見出し語や例文がかなり多く、すこぶる便利 である。
さて、東北大の中村美千彦 (@Nakamura_Mitch) 教授が2017年5月8日にしたツイートで知ったのだが、研究社『新和英大辞典』の「無理難題」の項には「文部科学省がまた無理難題を言ってきた」という例文がある。単に無理難題を言ってきたのではなく、わざわざ「また」と述べているのが面白い。編者は文科省にから無理難題を繰り返し言われた経験があったのだろうかと心配になる [1] 。
そこで、『新和英大辞典』の中央省庁に対する態度が気になり、色々調べてみたところ、どうやらこの和英辞典は財務省に対して厳しいようだということが分かった。
財務省に厳しい『新和英大辞典』
『新和英大辞典』で「財務大臣」という項目を引くと、以下の例文が出てくる [3] 。
この男、財務大臣を務めるだけあって、なかなか有力な政治家らしい。何しろ、以下のような例文がある。
この財務大臣は現首相からの禅譲をねらっているのかもしれない。しかし、ライバル的な人物も存在するようだ。
もしかしたら、外務大臣も次期首相の座をねらっているのかもしれない。そして、次期首相をねらうライバル同士で仲が悪く、対立が起きやすいのかもしれない。
となれば、財務大臣としては、成果を挙げて首相の座を確実にしたいところだろう。折しも、金融不安があったようだ。
そこで、不良債権の処理と、その後の景気回復を図ることになった。
しかしながら、財務大臣がやったことはうまくいかなかったようだ。
しかも、景気回復のタイミングを見誤るというおまけ付きである。
なぜうまくいかなかったのだろうか。その理由を示唆する例文をいくつか挙げてみよう。
どうやら、経済産業省との連携がうまくいかず、しかも財務省の官僚が甘い見通しをしていたらしい。ここに挙げた例文からだけでも、この和英辞典の財務官僚に対する厳しい視線が感じられるだろう。
さて、この失政のせいか、ついに財務大臣は更迭されることになる。
そして、次の財務大臣には、あの「事ごとに対立した」外務大臣が就くことになる。
ライバル(?)である外務大臣に地位を奪われた形になった元財務大臣の気持ちはいかばかりであっただろうか。
まとめ
こういった財務省に関するストーリーが作れることは、実はこの『新和英大辞典』の例文が豊富であることを反映している。もし大臣について就任に関する例文しか載せていなかったらこんなストーリーは作れない。
ちゃんとストーリーができるほどさまざまな表現を収めているからこそ、実際に英語で文章を書くときに役に立つのだろう。