谷山豊が東京大学で出題した数学の期末試験問題

概要
谷山–志村予想で知られる数学者の谷山豊が東京大学で教えていた際に出題した期末試験の問題を紹介する。

はじめに

谷山–志村予想で知られる谷山豊という数学者がいた。彼は、1958年に31歳という若さで自殺した。

東京大学教養学部1号館(2013年撮影)。
東京大学教養学部1号館(2013年撮影)。

生前、谷山は東京大学教養学部で数学を教えていた。その際、谷山が東大で出題した数学の期末試験の問題を発見したので、ここに記しておきたいと思う。谷山の著作権保護期間はすでに切れているので、転載しても問題ないだろう。

出典は以下の通り。

上記出典に、谷山が作った手書きの期末試験問題が影印されていたので、それをそのまま写してある。出典にはいつ出された問題か明確に書かれていないのだが、おそらく1957年か1958年に東大の教養学部の1年生か2年生に出した期末試験問題であると思われる。

試験科目は「解析」であり、試験時間は2時間が設定されている。問題は合わせて4問である。また、答案用紙は3枚、計算用紙は2枚。

問題本文

  1. $\displaystyle\int \frac{dx}{x^{2}\sqrt{1+x^{2}}}$ ヲ求メヨ
  2. $\sqrt[5]{1+x}$ ノ展開式ヲ用イテ $\sqrt[5]{100}$ ヲ小数第4位マデ正確ニ計算セヨ (ヒント:適当ナ有理数 $a$ ニヨリ $100 = a^{5}+b = a^{5} (1+\frac{b}{a^{5}})$ トスル)
  3. 0’ 近傍デ収斂スル級数 $f(x) = \displaystyle\sum_{n=0}^{\infty} a_{n}x^{n}$ ガ,微分方程式 $$x \frac{d^{2}f(x)}{dx^{2}} + (1-m) \frac{df(x)}{dx} – f(x) = 0$$ ヲ滿ストキ,コノ級数ノ係数ヲ定メ,マタ収斂半径ヲ求メヨ.タダシ $f(0)=1$ トシ,マタ $m$ ハ負ノ整数
  4. $(x, y, z)$ ヲ三次元空間ノ直交座標トスル.$C$ ヲ空間曲線トシ,$C$ ノ,$x, y$–平面ヘノ正射影ヲ $C_{1}$ トスル.マタ $C$ ノ点 $P, Q$ ノ,$x, y$-平面ヘノ正射影ヲ $P_{1}, Q_{1}$ ト書ク.$C$ ノ各点ニオケル接線ガ $x, y$–平面ニ平行デモ垂直デモナイトスル.マタ,$C$ ノ各点 $P$ ニオケル主法線ノ,$x, y$–平面ヘノ正射影ガ常ニ,平面曲線 $C_{1}$ ノ $P_{1}$ ニオケル法線ニナツテイルトスレバ,点 $P$ カラ $Q$ マデノ $C$ ノ長サト,$P_{1}$ カラ $Q_{1}$ マデノ $C_{1}$ ノ長サトノ比ガ,$P, Q$ ニヨラズ一定デアルコト,マタ $P$ ニオケル $C$ ノ曲率ト $P_{1}$ ニオケル $C_{1}$ ノ曲率トノ比ガ $P$ ニヨラズ一定デアルコトヲ証明セヨ.