はじめに
2017年2月14日に、新しい小学校学習指導要領案 [1] が公開された。これはまだ「案」という形であるが、パブリックコメントを経て、3月にほぼそのままの形で正式に告示されることになる。そして、平成32年度(2020年度)からこの新しい小学校学習指導要領が全面的に実施される予定である。
2017年12月24日追記:3月に告示された『小学校学習指導要領』の学年別漢字配当表は、2月時点の案のものとまったく同じになった。つまり、本記事で紹介したとおりに学年別漢字配当表が変更されることが正式に決まった。なお、新しい小学校学習指導要領の全面実施は平成32年度(2020年度)からであるが、平成29年文部科学省告示第93号(平成30年4月1日から平成32年3月31日までの間における小学校学習指導要領の特例を定める件)により、平成30–31年度の4年生の指導、平成31年度の5年生の指導においては新しい学年別漢字配当表を用いることとなっている。
この平成29年(2017年)3月告示予定の小学校学習指導要領案では、国語の学年別漢字配当表 [2] が、今までのものから変更された。学年別漢字配当表が変更されるのは、平成元年(1989年)告示の小学校学習指導要領以来のことである。今回、すなわち平成29年告示の小学校学習指導要領の学年別漢字配当表では、都道府県名に使われる漢字20字が新たに表に加わり、さらにいくつかの漢字の配当学年が変わった。なお、表から削られた漢字はない。
この記事では、まず、具体的にどのような漢字が表に加わったのかについて紹介する。次に、配当学年が変更された漢字について具体的な変更状況を紹介する。また、学年ごとに見た場合にどう変わるのかについても紹介する。最後に、今回、配当漢字が変更された背景について説明する。
なお、平成29年(2017年)3月告示予定の小学校学習指導要領案については、日本政府が運営する「電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ」にある「学校教育法施行規則の一部を改正する省令案並びに幼稚園教育要領案、小学校学習指導要領案及び中学校学習指導要領案に対する意見公募手続(パブリック・コメント)の実施について」に添付されている「小学校学習指導要領案」を典拠として用いた。また、それ以前の学年別漢字配当表については、平成20年(2008年)3月告示の小学校学習指導要領所収のものを典拠として用いた。なお、この平成20年の学年別漢字配当表については、文部科学省ウェブサイトの「別表 学年別漢字配当表」のページから閲覧できる。
新しく学年別漢字配当表に加わった漢字
今までの学年別漢字配当表にはなかったが、平成29年告示の小学校学習指導要領で学年別漢字配当表に加えられる予定の漢字は以下の20字である。いずれも小学4年生に配当される。
- 新たに4年に配当されるようになったもの(20字)
- 茨 媛 岡 潟 岐 熊 香 佐 埼 崎
- 滋 鹿 縄 井 沖 栃 奈 梨 阪 阜
配当学年が変更された漢字
平成29年告示の小学校学習指導要領で配当学年が変更される予定の漢字は、37字ある。旧来の学年別漢字配当表の配当学年と新しい学年別漢字配当表の配当学年の組み合わせごとに記せば以下の通りになる。
- 旧5年が新4年に配当されるようになったもの(4字)
- 賀 群 徳 富
- 旧6年が新4年に配当されるようになったもの(1字)
- 城
- 旧4年が新5年に配当されるようになったもの(21字)
- 囲 紀 喜 救 型 航 告 殺 士 史
- 象 賞 貯 停 堂 得 毒 費 粉 脈
- 歴
- 旧4年が新6年に配当されるようになったもの(2字)
- 胃 腸
- 旧5年が新6年に配当されるようになったもの(9字)
- 恩 券 承 舌 銭 退 敵 俵 預
学年ごとに見た変更点
上で説明したことと重複する内容になるが、利便を図るために、学年ごとに配当漢字がどう変わったかを説明する。
小学1年生
小学1年生に配当される漢字は、今までのものと違いはない。平成29年告示の小学校学習指導要領でも、今までと同じ80字が配当されている。
小学2年生
小学2年生に配当される漢字も、今までのものと違いはない。平成29年告示の小学校学習指導要領でも、今までと同じ160字が配当されている。
小学3年生
小学3年生に配当される漢字も、今までのものと違いはない。平成29年告示の小学校学習指導要領でも、今までと同じ200字が配当されている。
小学4年生
小学4年生に配当される漢字は、今までのものからかなりの変更がある。今までは4年に配当されていなかった25字が加わり、今まで4年に配当されていた23字が他の学年に移ることになった。このため、今までは200字が配当されていたのが、平成29年告示の小学校学習指導要領では202字が配当されることになる。
- 小学4年生に新たに配当される漢字
- 旧表では小学校の範囲外であった漢字
- 茨 媛 岡 潟 岐 熊 香 佐 埼 崎
- 滋 鹿 縄 井 沖 栃 奈 梨 阪 阜
- 旧表では5年に配当されていた漢字
- 賀 群 徳 富
- 旧表では6年に配当されていた漢字
- 城
- 旧表では小学校の範囲外であった漢字
- 小学4年生への配当から外される漢字
- 新表で5年に配当される漢字
- 囲 紀 喜 救 型 航 告 殺 士 史
- 象 賞 貯 停 堂 得 毒 費 粉 脈
- 歴
- 新表で6年に配当される漢字
- 胃 腸
- 新表で5年に配当される漢字
小学5年生
小学5年生に配当される漢字は、今までのものから相当の変更がある。今までは5年に配当されていなかった21字が加わり、今まで5年に配当されていた13字が他の学年に移ることになった。このため、今までは185字が配当されていたのが、平成29年告示の小学校学習指導要領では193字が配当されることになる。
- 小学5年生に新たに配当される漢字
- 旧表では4年に配当されていた漢字
- 囲 紀 喜 救 型 航 告 殺 士 史
- 象 賞 貯 停 堂 得 毒 費 粉 脈
- 歴
- 旧表では4年に配当されていた漢字
- 小学5年生への配当から外される漢字
- 新表で4年に配当される漢字
- 賀 群 徳 富
- 新表で6年に配当される漢字
- 恩 券 承 舌 銭 退 敵 俵 預
- 新表で4年に配当される漢字
小学6年生
小学6年生に配当される漢字は、今までのものから若干の変更がある。今までは6年に配当されていなかった11字が加わり、今まで6年に配当されていた1字が他の学年に移ることになった。このため、今までは181字が配当されていたのが、平成29年告示の小学校学習指導要領では191字が配当されることになる。
- 小学6年生に新たに配当される漢字
- 旧表では4年に配当されていた漢字
- 胃 腸
- 旧表では5年に配当されていた漢字
- 恩 券 承 舌 銭 退 敵 俵 預
- 旧表では4年に配当されていた漢字
- 小学6年生への配当から外される漢字
- 新表で4年に配当される漢字
- 城
- 新表で4年に配当される漢字
配当漢字変更の背景
ところで、なぜ上記のような学年別漢字配当表の改訂が行われたのであろうか。その理由を端的に言えば、小学4年生の段階で都道府県名に用いる漢字をすべて学習させるためである。実際、4年生に新たに配当される漢字は、栃木県の「栃」や群馬県の「群」など、いずれも都道府県名に用いられる漢字である。
ただし、単に都道府県名に用いる漢字を入れるだけでは、4年生に配当される漢字が多くなりすぎてしまう。このため、もともと4年生に配当していた漢字を上の学年に配当することで、学習負担を減らしたのだろう。
実際、今回の小学校学習指導要領の改訂方針を定めた中央教育審議会の答申 [3] では、第2部第2章の1の(2)の②のiiにおいて、国語の内容の見直しの具体的な方向性として、次のような指摘がなされている。
ここでの都道府県名に用いる漢字を加えるという記述が、4年生に都道府県名に用いる漢字が新たに配当されるようになったことにつながっている。また、「当該学年における児童の学習負担に配慮することが必要」という記述については、もともと4年生に配当していた漢字を上の学年に配当することで対処されている。
また、上記の中央教育審議会の答申に基づき、平成29年(2017年)3月告示予定の小学校学習指導要領案では、国語の指導計画の作成と内容の取扱いにおいて、以下のような記述が加えられることになった。
ところで、なぜ他の学年でなく、4年生に都道府県名に用いる漢字が配当されることになったのだろうか。これは、おそらく社会科において4年生の段階で都道府県名を学習することになっているのに合わせたのだと思われる。実際、小学校学習指導要領案(2017年)の第2章第2節の第2の第4学年の2の(1)のアの(ア)においては「47都道府県の名称と位置を理解すること」と記されている。
補:学年別漢字配当表データテーブル
コンピュータ上での分析に資するために、GitHub に学年別漢字配当表に載っている漢字のデータテーブルを掲載した。以下から入手可能である。