はじめに
この記事では、日本の小学校の国語教科書に載っている作品で、中国語版が出版されているものを紹介する。日本語で慣れ親しんだ作品を中国語で読めば、中国語の学習に役立つかもしれない。
おおきなかぶ
「おおきなかぶ」はロシアの民話で、いろんな人や動物が協力して、おおきなかぶを引き抜くという物語である。中国語のタイトルの“拔萝卜”は「かぶを引き抜く」という意味である。
- 阿・托尔斯泰.(2015). 《拔萝卜》北京:教育科学出版社.
スイミー
「スイミー」はオランダ出身でアメリカで活躍したレオ・レオニが書いた童話である。中国語版のタイトルにあるように、小さな黒い魚であるスイミーが海の中で生きぬく物語である。
- 李欧・李奥尼.(2010). 《小黑鱼》海口:南海出版公司.
スーホの白い馬
「スーホの白い馬」は、現在では中華人民共和国領になっている内モンゴルに伝わる民話をもとに作られた童話である。スーホという少年と白い馬の交流を描いた悲しげな作品である。
- 大塚勇三.(2013). 《苏和的白马》北京:新星出版社.
モチモチの木
「モチモチの木」の中国語訳タイトルに含まれる“魔奇魔奇”(móqímóqí)は日本語の「モチモチ」を音訳したものだろう。“魔”と“奇”という漢字と、滝平二郎による挿絵の効果もあって、ホラーのように見えるが、実際はかなり心温まる物語である。この物語には、豆太という弱虫な少年が登場する。この豆太が勇気を持つようになるという成長を描いた作品である。
- 齐藤隆介.(2014). 《魔奇魔奇树》北京:新星出版社.
てぶくろを買いに
「てぶくろを買いに」は、日本の児童文学者新美南吉が書いた童話である。この話は、てぶくろを買いに行ったきつねの子どもを描いた作品である。中国語のタイトルの“小狐狸买手套”は、「小さなきつねがてぶくろを買う」という意味になる。ここでの“狐狸”は単に「きつね」という意味である。日本語の感覚からすると、“狐狸”は、きつねとたぬきの両方を指すような気がするが、中国語では単にきつねのみを指す。
- 新美南吉.(2010). 《小狐狸买手套》海口:南海出版公司.
ごんぎつね
「ごんぎつね」も、新美南吉が書いた童話で、「ごん」というきつねを主人公としたものである。中国語のタイトルは“小狐狸阿权”である。“狐狸”は上で述べたように「きつね」を指す。“阿权”は日本の漢字になおすと、“阿権”になる。おそらく「ごん」を“権”に当てたのだろう。また、“阿”は中国語で名前などの前につけて「~ちゃん」といった愛称にするための表現である。つまり、“小狐狸阿权”は「小さなきつねごんちゃん」といった程度の意味になる。
- 新美南吉.(2013). 《小狐狸阿权》合肥:安徽少儿出版社.
走れメロス
太宰治の小説「走れメロス」も中国語訳が出ている。
- 太宰治.(2013). 《奔跑吧,梅勒斯》重庆:重庆出版社.