はじめに
この記事では、日本の小学校の国語教科書に載っている作品で、英語版が出版されているものを紹介する。
英語を勉強している人にとって、内容がよく分からない英語の文章を読むのは簡単ではない。逆に、慣れ親しんだ内容であれば、英語の文章でも理解はしやすくなるだろう。
小学校の国語教科書に載っている作品は、日本語で慣れ親しんだという人も多く、内容をあらかじめ知っている場合が少なくない。そうした作品は、英語で書かれていても読みやすいだろう。また、子どもが英語を学ぶ場合にも、国語教科書に載っている作品の英語版を使えば、英語で読めるという自信をつけることもできるだろうと思う。
おおきなかぶ
「おおきなかぶ」は、もともとロシアの民話で、とてもおおきなかぶを収穫するためにいろんな人や動物たちが協力するという話である。以下に掲げる英語版のタイトルに含まれる enormous という単語は「巨大な」という意味である。
- Andrews, J. (2012). The Great Big Enormous Turnip. Nottinghamshire, UK: Award Publications Ltd.
スイミー
「スイミー」はオランダ出身でアメリカで活躍したレオ・レオニが書いた童話である。これは、スイミーという名前の小さな魚を主人公とした物語だ。周りのなかまの魚はみんな赤い色をしているのに、スイミーだけが黒い色をしている。そんな小さなスイミーが海を生きぬくという話である。
この作品はもともと英語で書かれたもので、以下が英語の原書である。
- Lionni, L. (1968). Swimmy. New York: Pantheon.
また、英語の原文と和訳が並んで読める形になっている絵本として、以下のものがある。
- レオ・レオニ.(2013). 『英語でもよめる スイミー』東京:好学社.
アレクサンダとぜんまいねずみ
「アレクサンダとぜんまいねずみ」は、「スイミー」と同じくレオ・レオニが書いた童話である。これももともと英語で書かれた作品で、原書のタイトルは Alexander and the Wind-Up Mouse である。
- Lionni, L. (1969). Alexander and the Wind-Up Mouse. New York: Dragon Books.
かわいそうなぞう
「かわいそうなぞう」は、空襲で逃げ出したら危ないからとして、第二次世界大戦中に上野動物園で殺されたぞうについてのノンフィクション童話である。英訳のタイトルは、Faithful Elephants となっている。この faithful とは「誠実な」という意味で、Faithful Elephants で「誠実なぞうたち」という意味になる。
- Tsuchiya, Y. (1998). Faithful Elephants: A True Story of Animals, People, and War. Boston: Houghton Mifflin.
スーホの白い馬
「スーホの白い馬」は内モンゴルの民話をもとに作られた童話で、スーホという少年と白い馬の交流、そして馬頭琴という楽器がどのように生まれたのかをえがいた作品である。内容としては悲しげなものになっている。
- Otuska, Y. (1999). Sukh’s White Horse. Tokyo: Labo Teaching Information Center.
三年とうげ
「三年とうげ」は、朝鮮半島の民話で、そこで転ぶと三年しか生きられないと言われる坂で転んでしまったおじいさんについての物語だ。三年しか生きられないというと、ホラーのように聞こえるかもしれない。だが、最後はハッピーエンドになる。
以下に挙げる英語版のタイトルは The Curse of Three-Year Hill で、直訳すると「三年丘ののろい」になる。
- Roberson, D. K. (2014). The Curse of Three-Year Hill [Kindle].
モチモチの木
「モチモチの木」は、おじいさんと二人で暮らす豆太という少し弱虫な男の子が、勇気を持てるようになったという成長を描いた童話である。以下に挙げる英語のタイトルは、「勇気の木」という意味で、勇気を持てるようになったという意味をこめたものだろう。
- Saito, R. (2007). The Tree of Courage. Tokyo: RIC Publications.
ごんぎつね
「ごんぎつね」は、新美南吉が書いた童話である。この作品は、いたずら好きのきつねの「ごん」が、兵十という村人を困らせてしまったことを後悔し、兵十につぐないをするというものである。
以下に掲げる英語版の「ごんぎつね」は、英語学習者のために、簡単な単語だけ使って訳してある。出版社の説明によると、中学校の英語の授業で習う約1000語を使って書いてあるとのことである。
- Niimi, N. (2006). Gon, the Fox. Tokyo: IBC Publishing.
てぶくろを買いに
「てぶくろを買いに」も、新美南吉が書いた童話で、きつねが主人公になっている。以下の英語版は先に紹介した「ごんぎつね」の英語版と同じシリーズで、簡単な単語だけ使って訳してある。
- Niimi, N. (2006). Buying Some Gloves. Tokyo: IBC Publishing.
走れメロス
「走れメロス」は太宰治が書いた小説で、邪知暴虐な王に対し、メロスがその行動をもって人を信頼することを説く物語である。以下の英語版は、簡単な単語だけ使って訳してあるものである。
- Dazai, O. (2005). Run, Melos, Run. Tokyo: IBC Publishing.
注文の多い料理店
「注文の多い料理店」は宮沢賢治が書いた童話で、二人の男が山の中の不思議な料理店に迷いこむという話である。
- Miyazawa, K. (2005). Restaurant of Many Orders. Tokyo: RIC Publications.