結論
2017・2018年(平成29・30年)改訂の学習指導要領 [1] のもとでは、小中高在学中の英語の授業時間 [2] が以下のようになる。
- 小学校:157時間30分
- 中学校:350時間
- 高等学校:最低58時間20分。実際には500時間近く学ぶ場合も。
なお、ここでいう授業時間は、あくまでも学習指導要領の標準通りに授業を行った場合の理論上の値である。実際には、学習指導要領上は英語の授業をすることが求められていない小1や小2で英語の授業をするなど、上記の理論上の値より授業が多くなることがある。逆に、2020年の新型コロナ肺炎に伴う休校により授業ができず、理論上の値より時間が減るところも出てくるだろう。
小学校
小学校では、小3と小4で外国語活動として英語を学び、小5と小6で「外国語」という教科として英語を学ぶことになる。年間の授業時間は以下のように規定されている [3] 。この規定が適用されるのは、2020年度(令和2年)以降である。
学年 | コマ数 | 実時間 | 備考 |
---|---|---|---|
小3 | 35コマ | 26時間15分 | 外国語活動 |
小4 | 35コマ | 26時間15分 | 外国語活動 |
小5 | 70コマ | 52時間30分 | 教科としての「外国語」 |
小6 | 70コマ | 52時間30分 | 教科としての「外国語」 |
よって、小3から小6までの授業時間は合わせて157時間30分ということになる。なお、35コマならば週1コマ、70コマならば週2コマとなるのが基本。
旧学習指導要領との違い
1つ前の学習指導要領である2008年(平成20年)改訂の学習指導要領では、以下の表に示すように、小5に35コマ、小6に35コマの外国語活動が設定されているのみであった。小3・小4に外国語活動はなく、小5・小6に教科としての「外国語」も設定されていなかった。よって、平成20年の学習指導要領と平成29年の学習指導要領を比べると、29年の方が140コマ(=105時間)だけ英語の授業多いことになる [4] 。
学年 | コマ数 | 実時間 | 備考 |
---|---|---|---|
小3 | 0コマ | 0時間 | なし |
小4 | 0コマ | 0時間 | なし |
小5 | 35コマ | 26時間15分 | 外国語活動 |
小6 | 35コマ | 26時間15分 | 外国語活動 |
移行措置における授業時間
さらに新旧の学習指導要領のギャップを埋めるために、2018年度と2019年度は移行措置として英語の授業時間を以下のようにするように定められている [5] 。
学年 | コマ数 | 実時間 | 備考 |
---|---|---|---|
小3 | 15コマ | 11時間25分 | 外国語活動 |
小4 | 15コマ | 11時間25分 | 外国語活動 |
小5 | 50コマ | 37時間30分 | 外国語活動 |
小6 | 50コマ | 37時間30分 | 外国語活動 |
小学校入学年度ごとの英語の授業時間
旧学習指導要領から新学習指導要領に切り替わるタイミングで小学校に在籍する児童については、小学校在学中の英語の授業時間の計算が少しややこしくなる。例えば、2015年に小学校に入学した児童は、2018年の小4時と2019年の小5時は移行措置の授業時間数が適用され、2020年の小6時には新学習指導要領下の授業時間数が適用されることになる [6] 。
小学校に入学する年度ごとに英語の授業時間がどうなるかをまとめたものが次の表である。
年度 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
旧指導要領 | 旧指導要領 | 移行措置 | 移行措置 | 新指導要領 | 新指導要領 | 新指導要領 | 新指導要領 | コマ数 | 実時間 | |
2012年小学入学 | 小5(35コマ) | 小6(35コマ) | 70コマ | 52時間30分 | ||||||
2013年小学入学 | 小5(35コマ) | 小6(50コマ) | 85コマ | 63時間45分 | ||||||
2014年小学入学 | 小5(50コマ) | 小6(50コマ) | 100コマ | 75時間 | ||||||
2015年小学入学 | 小4(15コマ) | 小5(50コマ) | 小6(70コマ) | 135コマ | 101時間15分 | |||||
2016年小学入学 | 小3(15コマ) | 小4(15コマ) | 小5(70コマ) | 小6(70コマ) | 170コマ | 127時間30分 | ||||
2017年小学入学 | 小3(15コマ) | 小4(35コマ) | 小5(70コマ) | 小6(70コマ) | 190コマ | 142時間30分 | ||||
2018年小学入学 | 小3(35コマ) | 小4(35コマ) | 小5(70コマ) | 小6(70コマ) | 210コマ | 157時間30分 |
中学校
中学校では、外国語という教科として英語を学ぶ。年間の授業時間は以下のように規定されている [7] 。
学年 | コマ数 | 実時間 |
---|---|---|
中1 | 140コマ | 116時間40分 |
中2 | 140コマ | 116時間40分 |
中3 | 140コマ | 116時間40分 |
よって、中学校3年間の授業時間は合わせて350時間ということになる。この授業時間は、1つ前の学習指導要領である平成20年(2008年)改訂の学習指導要領と変わっていない。なお、年間で140コマというのは週あたり4コマとなるのが基本。
高等学校
平成30年度(2018年)改訂の高等学校学習指導要領では、外国語の科目として以下のものが設定されている [8] 。1単位が週1コマの授業となるのが基本なので、3単位ならば週3コマの授業ということになる。
科目名 | 標準単位数 | コマ数 | 実時間 [9] |
---|---|---|---|
英語コミュニケーションI | 3 | 105コマ | 87時間30分 |
英語コミュニケーションII | 4 | 140コマ | 116時間40分 |
英語コミュニケーションIII | 4 | 140コマ | 116時間40分 |
論理・表現I | 2 | 70コマ | 58時間20分 |
論理・表現II | 2 | 70コマ | 58時間20分 |
論理・表現III | 2 | 70コマ | 58時間20分 |
これらの科目のうち、必履修とされているのは英語コミュニケーションIのみである [10] 。それ以外の科目を履修させるかどうかは学校に委ねられている。また、科目を履修するかどうかを生徒の選択に任せる場合もある。
最も授業時間が短くなるパターンが、必履修の英語コミュニケーションIのみを、特別に2単位まで減らして履修するパターン [11] 。この場合、58時間20分だけで済む。もっともこれだけしか履修しない学校はあまり出てこないだろうが。
普通科では進学校を中心として、設定されている6種類の科目すべてを履修させるパターンも多いだろう。この場合、495時間50分履修することになる [12] 。標準単位数より単位数を多くしたり、学校設定科目で英語の授業を追加で入れたりすることもあるだろうから、495時間50分よりも多く履修する可能性がある。
旧学習指導要領との違い
1つ前の学習指導要領である2008年(平成20年)改訂の学習指導要領のもとでは、外国語科で必履修である科目はコミュニケーション英語Iのみであった。この科目の標準単位数は3単位で、特別に2単位まで減らすことも可能である。これは2018年の学習指導要領の英語コミュニケーションIと同じ扱いであり、必履修の授業時間は新旧の学習指導要領で変わっていないことになる。
なお、他の科目も含め、新旧学習指導要領の対応関係を見ると以下のようになる。基本的に対応する科目の標準単位数は変わっていないことが分かるだろう。英語表現IIについては、論理・表現IIとIIIに分かれたと考えればよい。
旧学習指導要領 | 新学習指導要領 | |||
---|---|---|---|---|
科目名 | 標準単位数 | 科目名 | 標準単位数 | |
コミュニケーション英語基礎 | 2単位 | (消滅) | ||
コミュニケーション英語I | 3単位 | 英語コミュニケーションI | 3単位 | |
コミュニケーション英語II | 4単位 | 英語コミュニケーションII | 4単位 | |
コミュニケーション英語III | 4単位 | 英語コミュニケーションIII | 4単位 | |
英語表現I | 2単位 | 論理・表現I | 2単位 | |
英語表現II | 4単位 | 論理・表現II | 2単位 | |
論理・表現III | 2単位 | |||
英語会話 | 2単位 | (消滅) |
- 小学校と中学校が2017年改訂。高等学校が2018年改訂。 [↩]
- 学習指導要領上、英語を履修させずにそれ以外の外国語を履修させることも可能である。しかし、学習指導要領では、英語を履修させることを「原則」としており、実態としても英語の授業をする学校がほとんどになるだろう。 [↩]
- 小学校での年間の授業時間は、学校教育法施行規則(昭和22年5月23日文部省令第11号)の別表第1によって規定されている。 [↩]
- 平成29年の学習指導要領改訂に際して、学校教育法施行規則の一部を改正する省令(平成29年3月31日文部科学省令第20号)が出され、学校教育法施行規則の別表第1が改定され、授業時間が先に挙げた表のようになった。 [↩]
- 学校教育法施行規則の一部を改正する省令の一部を改正する省令(平成29年7月7日文部科学省令第29号)による。 [↩]
- 原級留置などは考えないものとする。 [↩]
- 学校教育法施行規則(昭和22年5月23日文部省令第11号)の別表第二で規定されている。 [↩]
- 標準単位数は、「高等学校学習指導要領」(平成30年文部科学省告示第68号)の第1章第2款の3の(1)のイに規定されている。 [↩]
- 「高等学校学習指導要領」(平成30年文部科学省告示第68号)の第1章第2款の3の(1)のアにおいて「単位については,1単位時間を 50 分とし,35 単位時間の授業を1単位として計算することを標準とする」とされている。よって、1単位を実時間に換算すると、35コマ×50分 = 29時間10分になる。 [↩]
- 「高等学校学習指導要領」(平成30年文部科学省告示第68号)の第1章第2款の3の(2)のアの(ア)の㋗による。 [↩]
- 「高等学校学習指導要領」(平成30年文部科学省告示第68号)の第1章第2款の3の(2)のアの(ア)において、「生徒の実態及び専門学科の特色等を考慮し,特に必要がある場合には,「数学I」及び「英語コミュニケーションI」については2単位とすることができ」ることが規定されている。 [↩]
- すべて履修させる場合は、高1で英語コミュニケーションIと論理・表現I、高2で英語コミュニケーションIIと論理・表現II、高3で英語コミュニケーションIIIと論理・表現IIIを履修させるというのが典型的になると思われる。 [↩]