「遷」の旧字体
戦前の日本の明朝体活字(以下、旧字体)での「遷」の字形について触れたい。現代の字形では右下の部分が「己」となっているが、この部分は旧字体ではほとんどの場合「巳」で表される。ただし、旧字体では「⺋」とする字形もある。なお、旧字体ではこの字に限らず、しんにょうの点の数は普通2つであり、その点でも現代の字形と異なっている。
「巳」とするもの
『康煕字典』では、「遷」は右下を「巳」にする字体で記されている。そして、旧字体では「巳」とする形が最もよく用いられた。以下、実例を2つ挙げよう。
「⺋」とするもの
旧字体で右下の部分を「⺋」とする「遷」はあまり多くないが、全く使われていないわけではない。実例を2つ挙げよう。
現代のコンピュータで「遷」の旧字体を使い分ける
Unicodeでは、異体字セレクタを用いることで、「遷」の旧字体を出すことができる。U+9077 U+E0106 ならば、「巳」とする字形の「遷󠄆」になる。また、U+4E39 U+E0102 ならば、「⺋」とする字形の「遷󠄂」になる。
Adobe Japan1-6では、旧字体でしばしば用いられる「巳」とする字形が収録されていない。ただし、「⺋」とする字形ならば、CID+20231で出てくる。また、「覀」を「襾」の形にした異体字ならば、CID+13888で「巳」とする字形が、CID+20232で「⺋」とする字形を出すことができる。
脚注