「専」の右上に点を打つか迷ったら

概要
「博」のような漢字に含まれる「専」の右上に点を打つべきか迷った場合、音読みが何か考えると良い。「ハク」か「バク」なら点を打つ。「セン」なら点を打たない。

点を打つかどうかを判断する法則

「博」のような漢字の右上に点を打つべきか迷うことがあると思う。「博」は右上に点が付くのだが、単に「専」とした場合は点が付かない。

点を打つかどうかを判断する法則は極めて簡単である。その字の音読みを見るだけで点を打つかどうかを決めることができる。「博」のように音が「ハク」(もしくは「バク」)となる場合、点を打つ。これに対して、「専」のように音が「セン」となる場合、点を打たない。

音が「ハク」か「バク」なら右上に点を打つ。「セン」なら点を打たない。

音が「セン」なら「何もせんで良い」ので、点を打たないと覚えると分かりやすいだろう。

実例

以下、「専」を要素として含む漢字の例を紹介する。

点を打つ字

点を打つ字は音が「ハク」もしくは「バク」となる。

  • 博:音は「ハク」、「バク」。「博物館」、「博識」などの熟語がある。「博奕」は「バクチ」と読み、「バク」になる。
  • 薄:音は「ハク」。「薄謝」、「薄葬」などの熟語がある。
  • 縛:音は「バク」、「ハク」。「捕縛」、「束縛」などの熟語がある。
  • 膊:音は「ハク」。腕のことを表す字で、「上膊」と言うと肩からひじまでの部分を指す。
  • 搏:音は「ハク」。「脈搏」、「搏動」などの熟語 ((「搏」は常用漢字でないため、しばしば「拍」に置き換えられる。すなわち、「脈拍」、「拍動」のように表記される。)) がある。
  • 簿:音は「ボ」、「ホ」、「ハク」。「帳簿」、「簿記」などの熟語がある。この字だけ特殊で「ボ」と読むのが基本。

点を打たない字

先に見たように、点を打たない字は音が「セン」となる。ただし、時に「タン」と読むこともある。なお、以下を見れば分かるように、右上に点を打たない字で、日常使われる漢字は「専」しかない。だから、「専」だけ点を打たないで、他は何でも点を打つと覚えてしまっても良いかもしれない。

  • 専:音は「セン」。「専門」、「専用」などの熟語がある。旧字体は「專」。
  • 磚:音は「セン」。れんがのことを指す。れんがのように固めた茶のことを「磚茶」と呼び、これは「タンチャ」と読む。
  • 塼:音は「セン」。「塼」は「磚」とほぼ同義で、れんがのことを指す。「塼仏」(センブツ)というと仏の姿を粘土板の上に刻んで、れんがのように焼成したもののこと。7世紀に作られた「独尊像塼仏」・「三尊像塼仏」という重要文化財がある。

旧字体

左側が「専」の旧字体で、右上に点がない。右側が「博」の右半分を旧字体にしたもの(「尃」)で、「甫」と「寸」を合わせた形になっている。
左側が「専」の旧字体(「專」)で、右上に点がない。右側が「博」の右半分を旧字体にしたもの(「尃」)で、「甫」と「寸」を合わせた形になっている。

点を打つタイプの字と打たないタイプの字は、常用漢字では右上に点があるかないかだけの違いしかないのだが、旧字体だとはっきりとした違いがあった。

「博」のような点を打つタイプは、旧字体では「尃」という字形であり、「甫」という字の下に「寸」を置いた形をしている。「尃」は単独で「フ」・「ホ」という音を持つ。上部の「甫」の音も「フ」・「ホ」なので、「尃」は「甫」の音を引き継いでいる ((「捕手」の「捕」、「補足」の「補」は「ホ」と読む。これもまた「甫」の音を引き継いでいる。)) わけだ。なお、「簿」が「ボ」と読むのも、この「フ」・「ホ」の音を引き継いでいる。「甫」→「尃」→「溥」 ((ラストエンペラーとして知られる清の最後の皇帝の宣統帝の名前が「溥儀」で「フギ」と読む。)) →「簿」という流れだ。

点を打たない「専」の旧字体は「專」で、「叀」いう字の下に「寸」を置いた形をしている。「叀」は、「セン」という音を持ち、この音が「専」に引き継がれている。

注釈