中村氏への文化勲章
2014年のノーベル物理学賞に、青色LEDの開発で知られる中村修二氏が選ばれた。中村氏は日本生まれで、かつて日本で研究していたが、現在ではアメリカの市民権を得て、アメリカで仕事をしている。しかしながら、先に「2014年のノーベル物理学賞受賞者は日本人が3人か?」という記事で触れたように、日本の報道においては、中村氏を「日本人」扱いしているものが少なくない。
さて、日本ではノーベル賞を受賞した人に文化勲章が与えられていない場合、文化勲章が与えられる慣例がある。中村氏にもその慣例に従い、2014年11月3日に文化勲章が与えられた。中村氏に文化勲章が与えられたことは、他の叙勲の例と同様に『官報』に掲載される。『官報』(平成26年11月4日付、号外第243号)では、中村氏への叙勲を以下のように記し、アメリカ人扱いしている。
ちなみに、中村修二氏のノーベル物理学賞が決まった際に、安倍晋三総理大臣は2014年10月7日に、ノーベル物理学賞受賞に関して「内閣総理大臣コメント」を出している。その中では、以下のように中村修二氏を日本人扱いしている。
「授ける」と「贈与する」
勲章を与えるときの用語法としては、「文化勲章を授ける」のように「授ける」と言う場合と、「文化勲章を贈与する」のように「贈与する」と言う場合がある。両者は明確に分かれている。「授ける」は日本国籍を持つ人に与える場合に使う表現である。これに対して、「贈与する」は外国人に与える場合に使う表現である。
先に引用した中村氏の場合は、「贈与する」とされており、完全に外国人扱いされていることが分かる。
文化勲章の外国人への授与
文化勲章が外国人に授与されたことは、過去に4例ある。一番古いのは、1969年に人類を初めて月に送ったアポロ11号の宇宙飛行士の3人(ニール・アームストロング氏、マイケル・コリンズ氏、エドウィン・オルドリン氏)に対するものである。3人はいずれも米国人である。また、2008年にはドナルド・キーン氏に文化勲章が与えられている。