2014年のノーベル物理学賞受賞者は日本人が3人か?

概要
2014年のノーベル物理学賞受賞者について、日本のメディアは日本人が3人としているが、海外メディアは日本人が2人でアメリカ人が1人と見なしている。

内外の報道の違い

2014年10月7日、2014年のノーベル物理学賞に、赤崎勇氏、天野浩氏、中村修二氏の3人が青色発光ダイオード開発の業績で選ばれた。日本のメディアではこのことをもって、日本人が3人受賞したと考えているものが多い。

例えば、NHKのウェブ上のノーベル物理学賞に赤崎勇氏 天野浩氏 中村修二氏という記事では、「名城大学教授の赤崎勇さんと、名古屋大学大学院教授の天野浩さん、カリフォルニア大学教授の中村修二さんの日本人研究者3人が選ばれました」としており、3人全員が日本人であるとしている。

しかし、日本国外のメディアでは、日本人受賞者が2人、アメリカ人受賞者が1人としているものが多い。アメリカの市民権を有している中村氏について、日本人でなくアメリカ人として扱っているためである。

そして、ノーベル賞の公式サイトでの、今年のノーベル物理学賞に関するプレスリリースでは“Shuji Nakamura, American citizen.”(中村修二、アメリカ市民)と書いており、ノーベル賞側としては中村氏はアメリカ人とみなしていることが分かる。

余談

もちろん、日本のメディアの報道にも弁護する余地はある。中村氏が今回の受賞理由である青色発光ダイオードを開発したのは、中村氏が日本国籍しかもっておらず、日本において研究していた時期のことなので、それをもって日本の業績と言ってもそんなに変ではない。また、「日本人」という言葉を「日本国籍を持っている人」と解釈するのではなく、「日本で生まれ育った人」と解釈するのであれば、中村氏は今でも「日本人」と言えるだろう。

とは言え、そこまで深く考えているようにはあまり思えない。つまるところ、ノーベル賞をもって国威を発揚させようとかそういったナショナリズムの観点が「日本人受賞者が3人」という言い方の裏にあるのだろう。ものすごく単純に言えば、「ノーベル賞受賞者が多いから、我が国はすごいんだ」と言いたいだけのことなのである。

ただ、今年のノーベル物理学賞が日本の優秀性を示すというのはいつもにまして短絡的な考えであるかもしれない。今回受賞した中村修二氏については、中村氏自身がインタビュー [1] で語っているように、日本の社会に嫌気がさしてアメリカに行ってしまった側面がある。なので、国威発揚のために、中村氏を顕彰しようとすればするほど、日本の優秀性を示すどころか日本のひどさを表す例になってしまうかもしれない。

脚注
  1. 僕が会社をやめたわけ–青色LEDの発明者 中村修二氏に聞く []