『新明解国語辞典』での接尾語「家」の説明と山田忠雄編集主幹

概要
「足利家」や「織田家」といった表現で使われる「家」について、山田忠雄が編集主幹を務めた『新明解国語辞典』では「山田家」という用例を挙げていた。

『新明解国語辞典』に登場する「山田家」

新明解国語辞典』と言えば、三省堂から出ている国語辞典で、一風変わった語釈で知られている。この辞典の編集主幹を務めた山田忠雄は、1916年8月10日生、1996年2月6日没であり、本日2016年8月10日がちょうど生誕100年に当たる。

この山田忠雄について、『新明解国語辞典』に載った用例を1つ見てみたい。それは、「足利家」や「織田家」といった表現で使われる「」という接尾語の用例である。この「家」について、『新明解国語辞典 第4版』では以下のような語釈と用例が付されている。

け【家】(接尾)身分の有る家柄であることを表わす。〔広義では、普通の なんでもない人についてでも言う〕「山田—・宮—・将軍—」

『新明解国語辞典 第4版』(三省堂、1989年)

なんと、用例の最初に出てくるのが「山田家」である。つまり、山田忠雄編集主幹の苗字と同じである。もしかしたら、編集主幹の苗字をとってこの用例をつけたのかもしれない。

なお、ここでの「山田家」という用例が「身分の有る家柄」を指しているのか、広義の「普通のなんでもない人」を指しているのかは不明である。山田という苗字は、正直ありふれたものであるので、「普通のなんでもない人」の方かもしれない。ただ、山田忠雄の父は山田孝雄という有名な国語学者であるし、忠雄の弟の山田俊雄も国語学者である。このことを踏まえると、山田家は国語学の分野では名門と言えるかもしれず、「普通のなんでもない人」には当てはまらないかもしれない。

第5版での変更

なお、『新明解国語辞典 第5版』では、「家」の用例が次のように変わり、「山田家」という用例がなくなっている。

け【家】(接尾)身分の有る家柄であることを表わす。〔広義では、普通の なんでもない人についてでも言う〕「徳川—・宮—・将軍—」

『新明解国語辞典 第5版』(三省堂、1997年)

ちなみに、第4版が出たのは山田忠雄の生前で、第5版が出たのは山田忠雄の死後にあたる [1]

脚注
  1. 新明解国語辞典 第4版』は1989年発行で、『新明解国語辞典 第5版』は1997年発行。山田が没したのは1996年。 []