2014年の「今年の英単語」は“vape”(電子たばこ)に

概要
2014年の「オックスフォード辞典 今年の英単語」に“vape”(電子たばこ)が選ばれた。おしくも「今年の英単語」とはならなかった単語についても紹介。

はじめに

vapeが2014年の「今年の英単語」に
vapeが2014年の「今年の英単語」に

2014年11月17日、「2014年の今年の英単語」 (Word of the Year 2014) にvape(電子たばこ)が選ばれた ((Oxford Dictionaries. (2014, November). VAPE is named Oxford Dictionaries Word of the Year 2014 [Web log post]. Retrieved from http://blog.oxforddictionaries.com/press-releases/vape-named-oxford-dictionaries-word-year-2014/)) 。「今年の英単語」を選んでいる団体は様々なものがあるが、今日紹介するのは、オックスフォード大学出版局 (Oxford University Press) の辞書部門が選んだものである。オックスフォード大学出版局は、『オックスフォード英語辞典』(Oxford English Dictionary; OED)を始めとする様々な辞書を出版しており、その辞書の担当部門が vape を「今年の英単語」に選んだ。

“vape”について

2014年の英単語に選ばれたvapeは、「電子たばこ」(electronic cigarette, e-cigarette, e-cig) を意味する通俗的な表現 ((vapeは、後述のように、電子たばこそのものだけでなく、電子たばこを吸う行為をも指しうる。)) である。なお、vapeの発音は /veɪp/ ((カタカナで書けば「ヴェイプ」になるだろう。))である。

電子たばことは、「紙巻きたばこに似た大きさの筒の中に、液体入りのカートリッジとバッテリー、変霧器があり、吸い口で吸うと液体が霧状となり、吸い口に流れていく装置」 ((瀬川至朗 (2014). 「電子たばこ」自由国民社〔編〕『現代用語の基礎知識 2015』より引用。強調原文。)) のことである。

電子たばこの例。左側がバッテリー、右側が液体を入れる場所と吸い口になっている。
電子たばこの例 ((Flickrより、Jonny Williams氏によるCC BY 2.0画像を使用。)) 。左側がバッテリー、右側が液体を入れる場所と吸い口になっている。

vape という単語は2014年8月 ((Oxford Dictionaries. (2014, August). New words added to OxfordDictionaries.com today include binge-watch, cray, and vape [Web log post]. Retrieved from http://blog.oxforddictionaries.com/press-releases/new-words-added-oxforddictionaries-com-august-2014/)) にオックスフォード辞典のウェブサイト (Oxford Dictionaries) に収録されている。

ウェブサイト上では、名詞としての意味と動詞としての意味が挙げられている。

名詞としては、“An electronic cigarette or similar device” ((Definition of vape in English (n.d.). In Oxford dictionary (British & World English). Retrieved from http://www.oxforddictionaries.com/definition/english/vape)) と “An act of inhaling and exhaling the vapour produced by an electronic cigarette or similar device” ((Definition of vape in English (n.d.). In Oxford dictionary (British & World English). Retrieved from http://www.oxforddictionaries.com/definition/english/vape)) という意味が挙げられている。それぞれ、「電子たばこあるいは類似の機器」、「電子たばこあるいは類似の機器によって作られた蒸気を吸い込んだり吐き出したりする行為」ということだ。

動詞としては、“Inhale and exhale the vapour produced by an electronic cigarette or similar device” ((Definition of vape in English (n.d.). In Oxford dictionary (British & World English). Retrieved from http://www.oxforddictionaries.com/definition/english/vape)) という意味が挙げられている。これは、「電子たばこあるいは類似の機器によって作られた蒸気を吸い込んだり吐き出したりする」ということだ。ちなみに、自動詞としても他動詞としても使える。

vapeは、vapor ((vapourというのはイギリス式のつづりである。アメリカでは、vaporとなる。)) (蒸気)あるいはvaporize(気化する)が語源であるとされている ((Definition of vape in English (n.d.). In Oxford dictionary (British & World English). Retrieved from http://www.oxforddictionaries.com/definition/english/vape)) 。電子たばこは2003年に中国人漢方医の韓力 (Hon Lik) によって初めて実用化された ((Bellis, M. (n.d.). Who Invented Electronic Cigarettes? About.com. Retrieved from http://inventors.about.com/od/estartinventions/a/Electronic-Cigarettes.htm.)) ものであり、2014年に大きく広まった。しかし、それ以前にも蒸気を吸う機器の概念は考えられており、早くも1983年にvapeという単語の用例がある ((Oxford Dictionaries. (2014, November). VAPE is named Oxford Dictionaries Word of the Year 2014 [Web log post]. Retrieved from http://blog.oxforddictionaries.com/press-releases/vape-named-oxford-dictionaries-word-year-2014/)) 。1983年の用例は、New Societyに載った“Why do People Smoke?”(なぜ人々はたばこを吸うのか?)という記事の中にある。この記事において、著者のロッド・ステップニー (Rod Stepney) は、火をつけてたばこを燃やすのではなく、ニコチンの蒸気を吸う行為について触れている。そして、この行為について、“The new habit, if it catches on, would be known as vaping.”(訳:その新しい習慣は、もし受け入れられるとしたら、vaping として知られることになるだろう。)と書いたとのことである ((Oxford Dictionaries. (2014, November). VAPE is named Oxford Dictionaries Word of the Year 2014 [Web log post]. Retrieved from http://blog.oxforddictionaries.com/press-releases/vape-named-oxford-dictionaries-word-year-2014/)) 。なお、ここでは動詞原型のvapeではなく、vapingという語形になっている。

「今年の英単語」とは

オックスフォード辞典 今年の英単語」 (Oxford Dictionaries Word of the Year) は、オックスフォード大学出版局 (Oxford University Press) の辞書部門が選んだ、その年に多大な関心を集めた単語 (word) または表現 (expression) のことである。なお、「今年の英単語」は、必ずしもその年に生まれた新語である必要はない。実際、2014年の「今年の英単語」であるvapeは1980年代に使用された例すらある。その年に生まれた単語かどうかよりも、その年に関心を集めたかによって選ばれるのだ。

基本的に「今年の英単語」はイギリスとアメリカで別々のものが選ばれる。例えば、2005年はイギリスでは sudoku(数独)、アメリカでは podcast(ポッドキャスト)と別々の単語が選ばれている。ただし、年によってはイギリスとアメリカで同じ単語が選ばれることもある。2014年はイギリスとアメリカで同じ単語が選ばれている。

過去の「今年の英単語」

過去の「今年の英単語」には次のようなものがある。

過去の「今年の英単語」
イギリスアメリカ
2004chavチャブ ((独特の派手な格好をしている下層の若者のこと。)) (イギリスと同じ)
2005sudoku数独podcastポッドキャスト
2006bovvered〔“Am I bovvered?”の形で〕気にしない ((イギリスのコメディ番組『キャサリン・テイト・ショウ』 (Catherine Tate Show) でよく出てくるセリフ“Am I bovvered?”に由来する。)) carbon-neutralカーボンニュートラル ((生産活動の中で算出される二酸化炭素の量と吸収される二酸化炭素の量が同じであること。))
2007carbon footprintカーボンフットプリント ((商品などの製造・運送・廃棄などの過程で生じる温室効果ガスの排出量を二酸化炭素量に換算した上で表示したもののこと。)) locavore地元食主義者 ((もっぱら地元で取れたものを食べる人のこと。))
2008credit crunch信用危機 ((急に資金調達が困難になること。)) hypermiling燃費効率を上げること
2009simples〔間投詞として〕簡単に理解できるunfriend〔SNSの〕友達リストから外す
2010big society大きな社会 ((イギリスの保守党が2010年の総選挙で掲げたうたい文句。)) refudiate拒絶する ((サラ・ペイリン元アラスカ州知事が、refute(論破する)と repudiate(拒絶する)という2つの単語を混同して、refudiate と書いてしまったのが由来。))
2011squeezed middle圧迫された中間層 ((物価上昇に給与上昇が追いついていないために、困窮していく中間層のことを指す。)) (イギリスと同じ)
2012omnishamblesすべての観点からまずい対応をしてしまった状況GIF〔動詞として〕GIF形式の画像を作る
2013selfie自分撮り写真(イギリスと同じ)

おしくも「今年の英単語」にならなかった単語

オックスフォード大学出版局の辞書部門がおしくも2013年の「今年の英単語」にならなかった単語として挙げているもの ((Oxford Dictionaries. (2014, November). VAPE is named Oxford Dictionaries Word of the Year 2014 [Web log post]. Retrieved from http://blog.oxforddictionaries.com/press-releases/vape-named-oxford-dictionaries-word-year-2014/)) を以下に紹介する。

  • bae: パートナーに愛情を示すこと
  • budtender: 大麻を客に提供する人 ((最近米国では大麻の使用が合法化される動きがあり、各所で大麻が提供され始めている。))
  • contactless: ICカードや携帯電話を使って支払いを行うことに関する〔形容詞〕
  • indyref: 2014年9月のスコットランド独立住民投票
  • normcore: ありふれた流行遅れの服をあえて着るファッショントレンド
  • slacktivism: インターネットを通じて、ほとんど時間を使わずに社会的問題に対して支援すること ((筋萎縮性側索硬化症の研究を支援するために、氷水をかぶるか寄付を行うアイス・バケツ・チャレンジも slacktivism の一例である。))〔実際の小売店舗では商品の実物を見るだけで購入を行わず、ネット通販で商品を購入する消費者の行動のこと〕

これらの単語はいずれも2014年に注目を集めた言葉である。

注釈