オンラインで無料で読める統計書プラス32冊

概要
オンラインで無料で読める統計書を紹介。入門書から、高度な内容の書籍まで。

はじめに

数年前に「オンラインで無料で読める統計書22冊」という記事を書いた。タイトルにあるように、オンラインで無料で読める統計書として、入門者向けから高度なものまで合わせて22冊紹介した。

その後、オンラインで無料で読める統計書をさらに発掘したので、ここに紹介しておきたい。今回新しく紹介するのは、32冊である。「オンラインで無料で読める統計書22冊」と合わせてご覧いただきたい。

統計学の入門

まずは、統計学を始めて学ぶ人に向けて書かれた書籍を紹介しよう。

  1. 村上正康・安田正實.(1989). 『統計学演習』東京:培風館.
    • 統計学を始めて学ぶ人のための入門書。
      • 記述統計、確率分布、推定・検定の基礎、簡単な線形回帰といった内容を扱っている。入門書としてはオーソドックスなところを扱っていると言えよう。
  2. 中澤港.(2003).『Rによる統計解析の基礎』東京:ピアソン・エデュケーション.
    • 統計学を始めて学ぶ人のための入門書。
    • 普通の入門書で扱われる記述統計の基礎や簡単な推定・検定のほかに、ノンパラメトリック検定、時系列データの扱い方、一般化線形モデルの入門などやや高度な内容も含む。
    • タイトルに「Rによる」とあるように、統計解析ソフトRを使って分析の説明をしている。
  3. Kerns, G. J. (2010). Introduction to Probability and Statistics Using R.
    • 統計解析ソフトRを使った確率・統計の入門書。
    • 確率・統計のごく基礎的なところから、重回帰・ブートストラップといったやや高度な内容を含む。
    • 後ろの方の章はまだ完成していない。
    • 読むための方法はやや特殊である。まず、統計解析ソフトRをインストールし、R上で IPSUR というパッケージをインストールする。その上で、IPSUR パッケージを読み込むことで、この本のPDFを読むことができる。詳しくは、Installation Instructionsのページを読もう。
  4. Illowsky, B., & Dean, S. (2013). Introductory Statistics. Houston: OpenStax.
    • 統計学を始めて学ぶ人のための入門書。
      • 記述統計、確率変数、中心極限定理、推定・検定の基礎、簡単な線形回帰、一元配置分散分析といった内容を扱っている。入門書としてはオーソドックスなところを扱っていると言えよう。
    • かなりのページ数にのぼり、大量の練習問題がある。ただし、分量の割には、発展的な話題に進むことがない。その分、1つのことを丁寧に説明していると言えるかもしれない。
  5. StatSoft, Inc. (2013). Electronic Statistics Textbook. Tulsa, OK: StatSoft.
    • 統計について基礎から応用までさまざまなことが載っている教科書。
  6. Probability and Statistics EBook (Statistics Online Computational Resource).
    • 統計の初心者向けの大部のオンライン教材。

(やや)高度な教科書

上に挙げた初心者向けの教科書に比べると(やや)高度な内容を扱っているものである。統計を本格的に使って分析するというときは、以下で挙げるような一般線形モデルや多変量解析などはよく用いるので、そういった場合は参考になるだろう。

  1. Lowry, R. (1998-2015). Concepts and Applications of Inferential Statistics.
    • t検定などの簡単な検定から、分散分析までの推測統計学の基礎的な内容を扱った教科書。
  2. Miller, J., & Haden, P. (2013). Statistical Analysis with the General Linear Model.
    • 一般線形モデルの教科書。
    • 分散分析・回帰分析・共分散分析を扱う。
  3. Shalizi, C. R. (2016). Advanced Data Analysis from an Elementary Point of View.
    • 回帰とその一般化から、因果推論までやや高度な内容の分析手法を紹介する教科書。
    • リンク先に載っているのはドラフトで、今後 Cambridge University Press から正式の本が出るとのこと。
  4. Coghlan, A. (2014). A Little Book of R For Multivariate Analysis.
    • 統計解析ソフトRを使った多変量解析の方法を示した小冊子。
    • 主成分分析や線形判別分析を扱う。
  5. Coghlan, A. (2016). A Little Book of R for Time Series.
  6. Cibois, P. (2014). Les methodes d’analyse d’enquetes. Lyon: ENS Editions.
    • 質問紙の分析方法について記した書籍。対応分析などについての説明がある。
    • フランス語で書かれている。
    • PDFがダウンロードできるように見えるアイコンがあるが、PDF版は提供されていない。
  7. Shipunov, A. (2016). Visual Statstics: Use R!.

数理統計学

以下の2冊は、扱っている範囲としては先に挙げた初心者向けの教科書と重複するところが大きいが、より数学的に厳密に議論している。

  1. Ash, R. B. (2007). Lectures On Statistics.
    • 数理統計学に関する書籍。
    • 一応、統計学に関する予備知識は無用ということになっているが、本当の統計の初心者が読むにはかなりきつい。
    • 数学がしっかり分かっていないと理解することは難しい。
  2. Rose, C., & Smith, M. D. (2002). Mathematical Statistics with Mathematica. New York: Springer.
    • 数理統計学の教科書。
      • 確率変数、確率分布、統計的漸近理論、最尤推定などを扱う。
    • 上記の無料でダウンロードできるものは2002年版である。それより新しい2013年版は有料である。

確率論

統計学と深く関わる分野として確率論がある。以下に挙げる確率論の入門書は、統計学そのものの教科書ではないが、統計を使う際の基礎となる部分を扱っているので、統計学をより良く理解するときに役立つだろう。

  1. Ash, R. B. (1970/2008). Basic Probability Theory. Mineola, NY: Dover.
    • 確率論の入門書。
      • 確率分布、確率変数、特性関数、大数の法則、中心極限定理、マルコフ連鎖などを扱う。
      • 最後の章で少しだけ統計的仮説検定や推定が扱われている。
  2. Pfeiffer, P. E. (2009). Applied Probability.

Rプログラミング

Rとは、統計解析のために広く使われているプログラミング言語である。この節に掲げた本以外にも、Rを使って説明しているものは多い。

  1. Wickham, H. (2014). Advanced R. Boca Raton, FL: CRC Press.
    • 統計解析ソフトRのプログラミング言語としての側面を詳しく扱った書籍。
      • Rの中級レベルから上級レベルに進みたい人にとっては必読。
      • Rで効率よく分析をしたい人にとってはを非常にお勧め。
      • 反面、Rについてよく知らない人には向かないので注意。
    • ちなみに和訳として『R言語徹底解説』というのが共立出版から出ている。
      • 和訳は、オンラインで無料で読めるわけではないので注意。

機械学習

  1. James, G., Witten, D., Hastie, T., & Tibshirani, R. (2013). An Introduction to Statistical Learning with Applications in R. New York: Springer.
  2. Shalev-Shwartz, S., & Ben-David, S. (2014). Understanding Machine Learning: From Theory to Algorithms. Cambridge, UK: Cambridge University Press.
  3. Kadane, J. B. (2011). Principles of Uncertainty. Boca Raton, FL: CRC Press.
  4. Boyd, S., & Vandenberghe, L. (2004). Convex Optimization. Cambridge, UK: Cambridge University Press.
  5. Rasmussen, C. E., & Williams, C. K. I. (2006). Gaussian Processes for Machine Learning. Cambridge, MA: MIT Press.
  6. Hastie, T., Tibshirani, R., & Wainwright, M. (2015). Statistical Learning with Sparsity: The Lasso and Generalizations.
  7. Goodfellow, I., Bengio, Y., & Courville, A. (2016). Deep Learning.

医学・生命科学に関わる統計

  1. Cox, S. B. (n.d.). Applied Biostatistical Analysis Using R.
    • 生命科学を学ぶ人向けの統計の入門書。仮説検定の基礎や一般線形モデルを扱う。
    • 分析ソフトとしてはRを使っている。
  2. Krijnen, W. P. (2009). Applied Statistics for Bioinformatics using R.
  3. Coghlan, A. (2015). A Little Book of R for Biomedical Statistics.
  4. Chongsuvivatwong, V. (n.d.). Analysis of Epidemiological Data Using R and Epicalc.

心理測定法

  1. Revelle, W. (n.d.). An Introduction to Psychometric Theory with Applications in R.
    • 心理測定法の教科書。心理測定法の教科書はそれほど多くないので、貴重な一書ではないだろうか。
    • 分析ソフトとしてはRを使っている。

実験計画法

  1. Oehlert, G. W. (2010). A First Course in Design and Analysis of Experiments.
    • 実験計画法および実験実施後の分析方法について書かれた教科書。
    • 分量も多く、かなり充実している。

統計学史

  1. 日本における統計学の発展
    • 1980年代の初めに統計学者西平重喜らが実施した聞き取りの報告書。
    • 報告書は基本的に手書き。
    • 近現代の日本における統計について、当時を知る関係者から話を聞いたオーラル・ヒストリー。
    • 林知己夫北川敏男などの統計学者のみならず、終戦直後に日本人の識字調査の実施にたずさわった国語学者の柴田武など統計に関わった他分野の学者、行政官などに対する聞き取りの記録もある。