教育産業のしくみが1冊でわかる本を出しました

概要
教育産業のさまざまな分野を説明した『図解即戦力 図解即戦力 教育産業のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』を紹介。初心者にとってわかりやすくなるよう全体像を示した入門書である。

はじめに

図解即戦力 教育産業のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)という書籍を分担執筆したのでご紹介したい。この本は2025年5月21日発売で、すでに入手可能となっている。

本書は、タイトルにある通り「教育産業」をテーマにした初心者向けの業界解説書である。「教育」と言うと学校教育を連想する人が多いだろうが、本書が対象とするのはそうではない。本書では、塾・予備校、社会人教育、習い事、フリースクールなど、学校の外で行われる学び全般を対象としている。詳しい目次や試し読みについては、以下の版元の紹介ページをご参照いただきたい。

本書は、紙版・電子版の両方で購入可能になっている。電子版については、版元の技術評論社からDRM(コピー制限)なしのPDF形式で提供されているものがある。こちらは、普通のPDFなので、PCやタブレットなど好きなデバイスで読むことができる。また、Amazon から Kindle 版も用意されているほか、楽天 Kobo、honto などの電子書籍もある。お好みのものをご利用いただきたい。

特徴

全体像から詳細に

本書の構成としては、全体像をまず説明した上でそれから詳細へという順に展開する形をとっている。これは書籍全体についてもそうだし、各章の構成も同様だ。

書籍全体について言うと、まず業界の全体像を提示するために第1章で「教育産業を取り巻く環境」を説明している。その上で、第2章で公教育(学校教育)の全体像を説明している。公教育は「教育産業」の範囲には含まれないのだが、教育産業を論じるに当たって必要な前提知識だ。このため、書籍の最初の方で初心者向けに丁寧に解説を入れた。そして、第3章以降で教育産業のさまざまな分野について具体的な詳細説明をしている。

各章の構成も、全体像から詳細へという順になっている。まずその領域に関する統計データや市場規模、政策動向などを提示し、マクロ的な視点を押さえてもらえるようにしている。その上で、代表的なサービスモデルやプレーヤー、現場の取り組みといった具体的な話題へと進んでいく。この流れにより、細かい事例に振り回されることなく、読者が自分の中で位置づけながら理解を進めることができる。

特に、教育業界についてよく知らない人にとっては、断片的な知識ではなく、意味のある「全体像」を持った状態で学びを始められることが重要だと考えており、そのための足場として意識的に構成を設計している。

扱う領域の幅広さ

先に述べたように、本書は「教育産業」について扱った書籍だ。ただ、「教育産業」というものを比較的広めにとって、この業界のさまざまな話題を挙げるようにしている。塾・予備校に限ることなく、社会人向けの教育、幼児教育や習い事、そしてフリースクールなど多様な学びの場を含めて取り上げている。

このように広めにとっているのは、これから教育産業に関わろうとする人たちに、できるだけ視野を広く持ってもらいたいと考えたからだ。特定の分野やサービスに固執するのではなく、まずは教育という営みがどこまでの領域を持ち得るのか、どんなアクターが関わり、どんな構造で動いているのかを押さえておくことが、結果として自分の立ち位置や関心をより深く理解する助けになる。本書では、そうした広い地図の中に自分の立ち位置を見つけてもらえるよう、構造的な視点と多様な具体例を往復するような形で内容を整理している。業界全体を俯瞰しながら、自分なりの興味や創発の種を見出していく──そうした出発点を支えることが、本書の大きなねらいでもある。

このことは、本書の目次を見ていただければよく分かると思う。一般的に教育産業というとどうしても進学を目指した塾や予備校の動向に目が行きがちだ。本書も塾や予備校を扱っているが、それだけでなくフリースクールなどの「一般的な学校の形態にとらわれない学びのかたち」を扱った第5章、「幼児教育や習い事などの子ども向け教育サービス」を扱った第6章などにも大きくページを割いている。これで教育産業の重層を理解できるようにしたつもりだ。

類書との比較

教育産業を扱った書籍としては、たとえば『図解入門業界研究 最新教育ビジネスの動向とカラクリがよ〜くわかる本[第3版]』(川上清市〔著〕、2021、秀和システム)などもある。こちらは、具体的な企業動向や業界トピックスを多めに紹介し、教育業界の「今」をダイジェストで把握するには良い感じだ。

一方、本書『図解即戦力 教育産業のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』では、個別の企業事例や最新ニュースに過度に依存せず、業界の構造や成り立ち、ビジネスモデルの基本構造といった「幹」の部分に重点を置いている。もちろん、必要に応じて現在進行中の政策や市場の変化、新しいプレーヤーの出現といったトピックにも触れてはいるが、それらはあくまで全体の流れや本質を理解するための補助的な素材として扱っている。情報の陳腐化を避け、数年後に読んでも有用であるように意識したつもりだ。

おわりに

教育産業に関わろうとする人が、この業界がどう成り立っているかの構造を理解することは重要だと思う。本書がその一助となればうれしい。初めて教育業界に触れる方、他業界から参入を考えている方、あるいは現場で働きながら広い視野を持ちたいと考えている方にとって、道しるべとなるような1冊になれば幸いだ。

教育産業の多様さを知れる一冊。
教育産業の多様さを知れる一冊。