2021とオイラーの素数生成多項式

概要
数多くの素数を生み出すオイラーの素数生成多項式を、オイラーがいつどのような形で気付いたかについて。また、2021年(令和3年)の素数な日付の一覧も掲載。

2021 は合成数

もうすぐ2020年が終わり、2021年となる。ところで、2021は素数だろうか? 素数ではない。2021 = 43 × 47 なので、2021は合成数である。

オイラーの素数生成多項式

ところで、2021 = 43 × 47 という等式に出てくる3つの整数はいずれも $n^{2} – n + 41$(nは正の整数)という形で表すことができる。

この $n^{2} – n + 41$ は数多くの素数を生む式として知られ、オイラーの素数生成多項式と呼ばれることがある。オイラーとは、18世紀に活躍した数学者のレオンハルト・オイラー (Leonhard Euler) のことだ。

実際、 $n = 1, 2, \dots, 40$ において、$n^{2} – n + 41$はすべて素数になる。

$n = 41$ のときは、それぞれ $n^{2} – n + 41 = 1681 = 41^{2}$ と合成数になるから、$n^{2} – n + 41$ が常に素数となるわけではない。

ただ、$n = 43, 44, 46, 47$ のときなども $n^{2} – n + 41$ は素数になる。1から500までの500個の整数を考えると、$n^{2} – n + 41$ が素数になるのはなんと326個もある。その意味で、$n^{2} – n + 41$ は数多くの素数を生む式なのだ。

n を引くか足すか

ところで、オイラーの素数生成多項式として $n^{2} – n + 41$ ではなく、$n^{2} + n + 41$ を挙げる場合がある。 n を足すか引くかが違うのである。

$n^{2} – n + 41$ も $n^{2} + n + 41$ も言っていることは本質的に同じである。なぜなら次のような式変形ができるからである。

\begin{eqnarray} && n^{2} + n + 41 \\ &=& n^{2} + 2n + 1 – n – 1 + 41 \\ &=& (n+1)^{2} – (n + 1) + 41 \end{eqnarray}

オイラーはn を引く方の式

オイラーは n を引く方の式で考えていたようだ。オイラーは次のように述べ、$n = 1, 2, \dots, 40$ において $n^{2} – n + 41$ がすべて素数になると指摘している。

Cette progression 41. 43. 47. 53. 61. 71. 83. 97. 113. 131 &c. dont le terme général est $41 − x + xx$, est d’autant plus remarquable que les 40 premiers termes sont tous des nombres premiers.

(訳:一般項が $41 − x + xx$ となる、この 41, 43, 47, 53, 61, 71, 83, 97, 113, 131……という数列は、最初の40個の項がすべて素数になるという点で、さらに注目すべきものである。)

Euler (1774)

上の文章は、元々は1771年にオイラーがベルヌーイに手紙に載っていたものだ。そして、その手紙の内容が1774年に出版された1772年のベルリン・アカデミーの紀要に転載された。上記の引用元は1774年に出版された1772年のベルリン・アカデミーの紀要の方である。

要するに、オイラーは1771年までに $n^{2} – n + 41$ の形の素数生成式に気付いており、それが公刊されたのが1774年であるということだ。このような感じで少しややこしいことになっているためか、文献によっては混乱も見られる。例えば、Mollin (1997) では、“$x^{2} – x + 41$, discovered by Euler in 1772”(1772年にオイラーによって発見された$x^{2} – x + 41$)という文言がある。オイラーは1771年までに気付いているわけだから、この記述は厳密に言うと適切ではない。また、Szekeres (1974) では “Euler noted in 1772 that the quadratic polynomial $x^{2} + x + 41$…” (オイラーは、二次多項式 $x^{2} + x + 41$が……であることを1772年に言及した)と書いてある。オイラーが挙げている式は $x^{2} + x + 41$ ではなくて、$x^{2} – x + 41$ だから、ここは、二重に適切ではないことになる。

n を足す方の式はルジャンドル

n を引くのではなくて、n を足す方の式で考えたのは、どうやらルジャンドルらしい。ルジャンドルはフランス革命暦の共和国6年*に出した書籍において、以下のように $n^{2} + n + 41$ の形の式を挙げている。

Donc si on fait successivement $\alpha = 0, 1, 2, 3\dots$ jusqu’à 39, toutes le valeurs qui en résulteront pour $\alpha^{2} + \alpha +41$, doivent être des nombres premiers.

(訳:ゆえに、順々に$\alpha = 0, 1, 2, 3\dots$ から39までにしていけば、$\alpha^{2} + \alpha +41$ に対して出てくるすべての値が素数になる。)

Legendre (1797–1798:311)

フランス革命暦の共和国6年は、西暦1797年9月22日から1798年9月11日に相当する。このためか、ルジャンドルのこの文献を引くときに1797年のものとしているものと1798年のものとしているものが混在している。なお、このブログでは、便宜上 Legendre (1797–1798) として引用した。

参考文献

2021年が良い年になりますように。
2021年が良い年になりますように [1]

付:素数な日付

西暦

西暦の年月日をまとめて1つの数字にしたときに素数となる日付は、2021年(令和3年)には21個存在する。

なお、2020年の最終日である12月31日を考えると、20201231は素数になる。よって、20201231と20210101とで年をまたいだ連続素数日になる。

和暦

和暦の年月日をまとめて1つの数字にしたときに素数となる日付は、2021年(令和3年)には32個存在する。

なお、西暦でも和暦でも素数になるのは、08月03日 (20210803, 30803) の1回のみである。

脚注
  1. Pixabay より Jeff Jacobs 氏のパブリックドメイン画像を使用。 []