はじめに
人に向かって自分の意見を述べる、あるいは自分の思っていることを文章にする――社会生活を送る場合、人に伝えるために何かを言うという機会がどうしても出てくる。正式に出版されるような文章を書く機会がない人でも、隣人と話したり、友達にメールを送ったり、Twitterでつぶやいたりするといったように、人に伝えるために何かを述べる機会は色々とある。
だが、何か伝えるというのはなかなか難しい。うまく伝えることができなければ、自分の意図を相手に理解してもらえなかったり、問題を引き起こしてしまったりする。例えば、軽い気持ちで「主婦って気楽で良いよね」と言ったのが、家事や子育てでとても憂鬱になっている主婦をとても傷つけてしまうことがある。
こうした問題を防ぐためには、何かを伝える前には、よく考えることが大切なのだ。それではどんなことを考えれば良いのだろうか。今日は考えるべきポイントとして、5つのことを紹介したい。
「考える」を英語にすると“THINK”の5字になる。この英語の5字のそれぞれを頭文字とした5つのポイント [1] ――True(本当か)、Helpful(役立つか)、Inspiring(奮い立たせるか)、Necessary(必要か)、Kind(思いやりがあるか)――を考えておけば、何かを伝えるときに失敗しにくくなるだろう。
True: 本当か?
まずすべきなのは、自分が伝えようとしていることが、本当 (True) のことかどうかを確かめることだ。デマを人に伝えてしまってはいけない。
例えば、キャベツが健康に良くないという人からうわさを聞いたとしよう。そこで、何も考えずに「キャベツは健康に良くないよ、食べない方が良いよ」と周りの人に告げるのは良くない。うわさをうのみにせず、本当かどうかを確認しよう。すぐに本当かどうか確認できないのならば、情報が信頼できるところからもたらされたのかを確認しよう。人から聞いたうわさなら普通はあまり信用できない。ちゃんとした新聞から出てきた情報なら、もう少し信用できるかもしれない。
ともかく、人に本当でないことをあわてて伝えないようにしよう。本当かどうかあやしいことに対しては「本当か?」と確かめることが大事だ。
Helpful: 役立つか?
何かを伝える前には、その言葉の受け手にとって役立つ (Helpful)かを考えよう。受け手にとって役に立たないのならば、受け手はあなたの言葉を真剣に取り合ってくれないだろう。
あなたの言葉の受け手はどういう人なのか考えよう。受け手によって役に立つかどうかは変わってくる。新しい効果的な雪かきの方法を見つけた場合、南国の住人に話すより、雪国の住人に話した方が良いだろう。
「役立つか?」という視点を持って考えれば、あなたの言葉を聞いてくれる人はもっと増えるはずだ。
Inspiring: 奮い立たせるか?
何かを伝える前には、あなたの言葉が他の人を奮い立たせ (inspring)、良い方向に進めるものなのかを考えよう。
あなたの言葉を契機として、他の人が新しいことを思いついたり、良い工夫を見つけたりしたら、それはすばらしいことだ。あなたの言葉のおかげで、世界に有用な情報が新たに加わるのだ。
言葉の力があれば人を動かすことができる。他の人を「奮い立たせるか?」と考えることで、自分にとっても他の人にとっても良い結果を生むことができる。
Necessary: 必要か?
何かを伝える前には、伝えること自体が必要 (Necessary) かどうかを考えよう。そもそも伝えない方が良いことだってある。
ブログや Twitter に言わなくてもいいようなことを書いてしまったために、炎上を起こしてしまい、他の人から叩かれ、社会的に危うい立場に立たされてしまった例はたくさんある。一度伝えてしまったことは取り戻せない。伝えることが必要かどうかを慎重に考えよう。
また、話の本筋自体は伝えるべき内容である場合に、不必要なことを加えてしまわないように気をつけよう。小さな失敗をした人に注意する場合は、大体その失敗についてのみ注意すれば良い。相手の他の欠点について根掘り葉掘り注意する必要はない。
勇気を持って、そもそも「必要か?」と考えるようにしよう。そうすれば、言葉がもたらす危険から身を守ることができる。
Kind: 思いやりがあるか?
何かを伝える前には、思いやりがある (Kind) ものになっているかどうかを考えよう。言葉は人を助ける道具にもなるし、人を傷つける道具にもなる。何か伝える前に、自分の伝えようとしていることが人を傷つけないか注意しよう。また、思いやりがある言葉ならば、他の人もその言葉を受け入れやすい。
他の人を傷つけないためにも、「思いやりがあるか?」ということをよく考えるようにしよう。
- この5つのポイントは、どこが初出なのかは分からない。英語圏のウェブサイトを見ていると、それなりによく言われているようだ。 [↩]