仁和寺にある法師―コミケ編

概要
少しのことであっても、案内をしてくれる先輩はほしいものである。コミックマーケットにおいても同様だ。

本文

仁和寺にある法師、年よるまでコミケに参らざりければ、心憂く覚えて、ある年思ひ立ちて、たゞひとり、国際展示場駅より詣でけり。エントランスプラザのコスプレなどを拝みて、かばかりと心得て帰りにけり。さて傍の人にあひて、「年ごろ思ひつること、果し侍りぬ。聞きしにも過ぎて人多くこそおはしけれ。そも参りたる人ごとに同人誌と言ひしは、何事かありけむ、ゆかしかりしかど、ビッグサイトを見るこそ本意なれと思ひて、列までは並ばず。」とぞ言ひける。すこしのことにも先達はあらまほしきことなり。

現代語訳

仁和寺のある法師が、年をとるまでコミックマーケット [1] にお参りに行ったことがなかったので、残念に思い、ある年思い立って、一人だけで国際展示場駅 [2] からお参りに行った。(ビッグサイトの)エントランスプラザ [3] のコスプレなどを拝見して、これだけと思って帰ってしまった。さて、(法師は)仲間に会って、「長年思っていたことを果たしました。聞いていたよりもずっと人が多うございました。それにしても、お参りしていた人たちが同人誌と言っていたのは、何かあったのだろうか、知りたかったのだけれども、ビッグサイトを見ることこそが本来の目的だと思って列には並ばなかった。」と言った。少しのことであっても、案内をしてくれる先輩はほしいものである。

注意書き

この物語はフィクションです。

脚注
  1. 年に2回開かれる日本最大の同人誌即売会。 []
  2. コミックマーケットが開かれる東京ビッグサイトの最寄り駅の1つ。 []
  3. 東京ビッグサイトの入口前にある屋外広場。 []