はじめに
学術論文を書く際には、参照した文献の情報を参考文献表に書く必要がある。参考文献表は所定のスタイル [1] に従って書かなくてはならない。しかし、これが結構難しい。紙に印刷された書籍を参照するならこうするが、電子書籍ならああしろといったように、色々な条件があるので、普通の人にはなかなか把握しきれないのである。
では、どうするか。真面目にやるなら文献管理ソフト [2] を使うのが正解だ。だが、締切が迫っているときに、文献管理ソフトに一からこつこつ入力するのは大変である。普段の不真面目さを嘆いてもどうしようもならない。
「締切が迫っていて今それどころじゃないんだよ!」というときに便利なのが、参考文献表にそのままコピペ可能な文献情報を出力するウェブサービスである。書籍については、ISBNを入力するだけで、簡単に文献情報を出力できる。今回紹介するウェブサービスはいずれもインターフェースが英語である。どうせ学術論文は英語で書くのだから問題ないだろう。
ウェブサービスから文献情報をコピペするときは、書式を失わないように注意する必要がある。テキストエディタに貼り付けると、イタリック体の情報が消えてしまう。Microsoft Wordなどに貼り付けるとよい。
ウェブサービスの事例
今回紹介するウェブサービスの一覧は以下の通りである。なお、以下の表で“ISBN”、“DOI”とあるのは、ISBNあるいはDOIを入れると文献情報を自動補完してくれるという意味である。また、「手入力」は文献のタイトルや著者名などを自分で入力することで、参考文献表にそのままコピペ可能な形にしてくれる機能があるという意味である。
サービス名 | APA形式 | MLA形式 | Chicago形式 | Harvard形式 | AMA形式 | ISBN | DOI | 手入力 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
OttoBib | ○ | ○ | ○ | × | × | ○ | × | × |
BibMe | ○ | ○ | ○ | × | × | ○ | × | ○ |
Citefast | ○ | ○ | ○ | × | × | ○ | × | ○ |
Cite·O·Matic | ○ | ○ | × | × | × | ○ | × | ○ |
WriteCite | ○ | ○ | × | ○ | × | ○ | × | ○ |
Medical & Scientific Citation Generator | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ |
書籍を引用する場合は、OttoBibを使うことをおすすめする。書籍でなく、雑誌論文などの文献情報を整形して出力したければ、BibMeかCitefastを使うことをおすすめする。BibMeとCitefastは機能的にはほぼ同等である。インターフェースが好きな方を選べばよい [3] と思う。
OttoBib
OttoBibは、文献情報を出力するウェブサービスの中で最もシンプルなものである。対応しているのは書籍のみである。雑誌に載った論文などには対応していない。
使い方は非常に簡単で、書籍のISBNを入力欄に入れるだけである。それだけで、MLA形式、APA形式、Chicago形式で、参考文献表にそのままコピペできる形にしてくれる。
BibMe
BibMeでは、MLA形式、APA形式、Chicago形式、Turabian形式で文献情報を出力することができる。OttoBibに比べると、複雑な設定を行うことができる。
文献情報を出力するには、まずBibMeの上部のタブから自分の載せたい文献の種類を選ぶ。Book(書籍)、Magazine(雑誌記事)、Newspaper(新聞記事)、Website(ウェブサイト)、Journal(学術誌の記事)、Film(映画)、Other(インタビュー、講義、ラジオ・テレビ、百科事典の項目、写真)から選択できる。Magazine(雑誌記事)とJournal(学術誌の記事)はまぎらわしいが、前者は一般向けの月刊誌や季刊誌を想定しており、後者は学術的な論文が載っている雑誌を想定している。
Book(書籍)の場合、ISBNを入れるだけで対応する書籍の情報が出てくる。ISBNの代わりに、書名や著者名から検索することもできる。出てきた書籍に対して、“Select”というボタンを押すと、書誌情報の詳細を入力する画面に切り替わる。もし書誌情報に誤りがあった場合は、ここで修正することができる。また、デフォルトだと書籍全体の情報を出力するが、書籍の1章だけを引きたい場合はこの画面で“What are you citing?”というところを“Entire book”から“Chapter from book”に変えればよい。問題が無ければ、“Add to My Bibliography”というボタンを押そう。すると、検索画面の右側に、整形された文献情報が出てくる。文献情報の表示形式を変えたければ、“Select Format”という欄から自分の使用したい形式に変更すればよい。
書籍以外でもほぼ同様に処理できる。学術誌に載った論文なら、Journalというタブを選択して、その論文のタイトルや著者名を入れて検索すればよい。
なお、Manual entry modeというものもある。これは、書籍のタイトル、出版社、著者などを手入力するものだ。“Add to My Bibliography”というボタンを押せば、右側に、整形された文献情報が出てくる。
Citefast
Citefastでは、APA形式、MLA形式、Chicago形式で、参考文献表にそのままコピペできる形にしてくれる。書籍に限らず、雑誌に載った論文、ウェブサイト、テレビ番組などの文献情報も出力できる。書籍については、タイトル、著者名、あるいはISBNを入れると、自動的に文献情報を埋めてくれる。その他は手入力しなくてはならない。
Cite·O·Matic
Cite·O·MaticではMLA形式、APA形式で文献情報を出力することができる。
検索欄に書籍のタイトル、著者名、あるいはISBNを入れると、それに対応する書籍の情報が自動的に出力される。なお、学術誌の記事や書籍のタイトル、著者などを手入力して、文献情報を整形した状態で出力することも可能だ。
WriteCite
WriteCiteでは、APA形式、MLA形式、Harvard形式、Harvard AGPS形式で文献情報を出力することができる。書籍のタイトル、著者名、あるいはISBNを入れれば、それに対応する書籍の情報が自動的に出力される。書籍に限らず、学術誌の記事などの文献情報を整形して出力することも可能だが、情報を手入力しなくてはならない。
インターフェースが分かりにくいので、あまりおすすめはしない。どうしてもHarvard形式で出したいという人向けである。
Medical & Scientific Citation Generator
Medical & Scientific Citation Generatorでは、AMA (American Medical Association) 形式で文献情報を出力することが可能である。AMA形式は医学関係の論文でよく使われる。
使い方は簡単だ。“Enter Query:”と書いている欄に書籍のISBNや論文などのDOI [4] を入れて、“Generate”というボタンを押すと、そのままコピペできる形の文献情報が出力される。
その他
上に挙げた以外にも、文献情報を出力するウェブサービスはある。ただ、上に挙げたものほどおすすめではない。
- Son of Citation Machine:MLA形式、APA形式、Turabian形式、Chicago形式
- Citation Producer:MLA形式、APA形式
- eTurabian:Turabian形式、MLA形式、APA形式