東京工業大学と接吻数

概要
東京工業大学のキャンパス最寄り駅の駅ナンバリングは、素数ではないが、接吻数と縁がある。

東京工業大学と駅ナンバリング

理工系分野を中心に教育・研究を実施している東京工業大学は、大岡山とすずかけ台にキャンパスを有している。それぞれのキャンパスの最寄り駅は大岡山駅すずかけ台駅で、いずれも東急電鉄の駅である。東急電鉄は駅ナンバリングを実施していて、各駅にローマ字と数字を組み合わせた番号がつけられている。

この2つの駅の駅ナンバリングについて、ちょっとした小話を。

東急電鉄「駅ナンバリングでは、大岡山駅はMG06、すずかけ台駅はDT24にします」

東工大生「素数じゃない! ふざけんな!」

東急電鉄「6と24は素数ではありませんが、それぞれ二次元と四次元の接吻せっぷんすうです」

東工大生「わーい! 二次元と四次元の接吻数だー!!! ん? ということは三次元とは接吻できない…!?」

東急電鉄は、本当に大岡山駅にMG06 [1] 、すずかけ台駅にDT24 [2] という番号をつけている。

そして、理工系の大学でありがちな話ではあるが、東工大生は素数に反応するというネタがある。例えば、「爆発事故も、おおむねネタに行きつく東工大生の悲哀」や「レゴ人形が素数を聞いて大喜びする「素数チャレンジ」を東工大が作成」という記事を参考のこと。幸か不幸か、大岡山駅の6とすずかけ台駅の24はいずれも素数ではない。しかし、接吻せっぷんすうというそれはそれで興味深い数になっている。

接吻数

さて、接吻数 (kissing number) とは、ある球の周りに、それと同じ大きさの球を重ならないように触れあって並べるときの最大の個数のことである。こう言うと、何だかピンと来ないかもしれない。例を見るのが一番分かりやすいだろう。

以下の図は、二次元の接吻数が6になることを示した図である。

二次元の接吻数が6になることを示した図
二次元の接吻数が6になることを示した図

この図で示された二次元平面の中に、中心の灰色の球 [3] の周りに、それと同じ大きさの白い球が6つ並んでいる。そして、周囲の白い球は触れあっているが重なってはいない。球をこれ以上追加すれば、どこかで重なってしまうので、6つ並べるのが限界である。つまり、二次元の場合、接吻数は6になるのである。

ちなみに、三次元の接吻数は12であり、四次元の接吻数は24である。これらの値をとることが証明されたのは比較的最近である。三次元の接吻数については、1953年の論文 [4] において12であることが証明された。四次元の接吻数の方は、2008年の論文 [5] においてようやく24だと証明された。

接吻数が具体的にいくつであるか分かっている次元はさほどない。オンライン整数列大辞典の数列A257479 には、具体的な値が分かっている接吻数として一次元、二次元、三次元、四次元、八次元、二十四次元のものだけ載っている。なお、接吻数で具体的な値が分かっているものを一覧にしたのが、以下の表である。

接吻数で具体的な値が分かっているものの一覧
次元接吻数の値
一次元2
二次元6
三次元12
四次元24
八次元240
二十四次元196560

接吻というと、恋愛のことが想像されるだろう(強引な展開)。

2015年5月1日現在、東京工業大学は学部学生の88%が男性と [6] 男子学生の比率が高い

このような状況の中で、東工大の学生が恋愛から縁遠いかどうかを判断するための確固たる証拠はない。ただ、東工大のリベラルアーツセンターで『東工大生のための恋愛学入門~恋愛を科学する~』という特別講座が開かれてしまう程度には、そういったことに縁がないのだと思われる。

こんなことから、現実の三次元世界での接吻の可能性もさほど高くないのかもしれない。大岡山駅の6にあやかって二次元での接吻というのはありうるかもしれないが(この発言はネタなので、本気にしないで下さい)。

高度合成数

ところで、6と24は高度合成数でもある。ある自然数がそれより小さいどの数よりも約数の個数が多いとき、その数は高度合成数と呼ばれる。

1から6までの自然数の約数
自然数約数の個数約数の一覧
111
221, 2
321, 3
431, 2, 4
521, 5
641, 2, 3, 6

例えば、6には約数が4つあり、6未満のどの数よりも約数が多くなっている。

脚注
  1. 東急電鉄ウェブサイトの各駅情報の「大岡山駅」のページの記載による(2016年6月5日閲覧)。厳密に言うと、MG06は目黒線の駅としての大岡山駅の番号である。大岡山駅には大井町線も通っており、大井町線の駅としての大岡山駅にはOM08という番号がついている。 []
  2. 東急電鉄ウェブサイトの各駅情報の「すずかけ台駅」のページの記載による(2016年6月5日閲覧)。 []
  3. 二次元では「球」よりも「円」と呼ぶことが多いだろうが、他の次元についても考えるときは「球」と言うので、用語を統一するためにあえて二次元でも「球」と呼んでいる。 []
  4. Schutte, K. and van der Waerden, B. L. (1953). Das Problem der dreizehn Kugeln. Mathematische Annalen, 125(1), 325-334. []
  5. Musin, O. R. (2008). The kissing number in four dimensions. Annals of Mathematics, 168, 1-32. ただし、arXiv.org上の草稿は2003年には出ている。 []
  6. Tokyo Tech 2015-2015 p.16 によれば、2015年5月1日現在学部学生の総数は4,734人で、そのうち4,179人が男性である。 []