2013年の「今年の英単語」は“because”(〜だから)に

概要
アメリカ方言学会が「2013年の今年の英単語」として because(〜だから)を選んだ。because の後に単なる形容詞や名詞が導かれる新しい用法が評価されたためである。

はじめに

because(〜だから)が2013年の「今年の英単語」に
because(〜だから)が2013年の「今年の英単語」に

2014年1月3日、アメリカ方言学会が「2013年の今年の英単語」(Word of the Year) として because(〜だから)を選んだ [1] because という単語は古くからある単語であるが、形容詞や名詞を導く新しい用法が広く見られるようになったために、今年の英単語として選ばれることとなった。

従来、because主語・動詞を後ろに伴って節を作る用法か、because of という形式での用法しかなかった。しかし、新しい用法では because の直後に単なる形容詞や名詞が来るようになっている。例えば、「便利だから」という意味を表すためには、従来は “because it is useful” のように節にして述べないといけなかったのだが、新しい用法では単に “because useful” と言うことができるようになったのだ。

because の新しい用法

because の新しい用法について述べる前に、because の従来の用法を確認しておこう。まず、because には主語・動詞を後ろに伴って節を作り、理由を表す用法がある。例えば、“I didn’t go to school because I was sick.”(訳:私は病気だったので、学校に行かなかった。)ならば、“because I was sick”(私は病気だったので)というのが理由になっている。I(私)という主語と was(だった)という動詞が含まれている。従来の用法では、この主語・動詞を外すと文として成立しなくなってしまう。

また、“because of + 名詞”という形式で理由を表す用法もある。“because of the rain”ならば、「雨のせいで」という意味になる。

従来、because には、この2つの用法しかなかったのだが、最近は、“because useful”(便利だから)のように単なる形容詞を後ろに置いたり、“because science”(科学だから)のように単なる名詞を後ろに置いたりして理由を表す用法が生じている。品詞的に言うと、because は接続詞だったのが、新しい用法では前置詞として使えるようになったと言って良いだろう。

‘Because’ has become a preposition, because grammar”と題したブログ記事でStan Carey氏が様々な新しい because の用例を収集しているので、参考にすると良い。

ただし、英語のテストで “because useful” のように書くと、今は「間違い」ということにされる可能性が高い。まだ、ちゃんとした書き言葉として定着した用法ではないからだ。

アメリカ方言学会の「今年の英単語」とは

アメリカ方言学会 (American Dialect Society) は、毎年「今年の英単語」 (Word of the Year) を選んでおり、2013年分が24回目となる。

なお、以前、オックスフォード大学出版局が2013年の「今年の英単語」としてselfieを選んだことを紹介したが、アメリカ方言学会の今年の英単語とは別物である。オックスフォード大学出版局は年内に「今年の英単語」を選び、これとは全く別に、アメリカ方言学会は年明けに「今年の英単語」を選ぶ。

アメリカ方言学会のウェブサイトには、「今年の英単語」を選ぶ際の基準として以下の4つのものが挙げられている。

  1. その年において、明らかに新しい語、あるいは新しく人気となった語
  2. その年に広く使われた語か、顕著に使われた語、または広くかつ顕著に使われた語
  3. 大衆の談話を示唆または反映する語
  4. 過剰使用や誤用に対するいらだちや不満を示すわけではない語

becauseは2013年に生まれた新語というわけではないが、新しい用法を獲得したということで、2013年の「今年の英単語」に選ばれたのである。

今までの「今年の英単語」

1990年から2013年までの「今年の英単語」のリストは以下の通りである。なお、1994年と1995年はそれぞれ同率一位で2つの単語が「今年の英単語」として選ばれている。

1990年から2013年までの「今年の英単語」
単語和訳
1990bushlips誠意のない政治的レトリック
1991mother of all 〜〜のすべての母
1992Not!反対!
1993information superhighway情報スーパーハイウェイ
1994cyberサイバー
morph形を変える
1995World Wide Webワールドワイドウェブ
newt新参者として攻撃的にふるまう
1996mom〔soccer momなどの形で〕教育熱心な母親
1997millennium bug2000年問題
1998e-電子〜〔情報通信に関することを示す接頭辞 [2]
1999Y2K2000年
2000chad穿孔くず〔パンチカードに穴をあけたときに出る紙くず〕
20019-119・11同時多発テロ
2002weapons of mass destruction大量破壊兵器
2003metrosexualファッションに興味を持つ異性愛の男性
2004red/blue/purple states赤い/青い/紫の州〔赤い州は共和党支持者が多い州、青い州は民主党支持者が多い州、紫の州はどちらでもない州を指す〕
2005truthiness実際の状況に関わらず真実となってほしいと望まれるもの
2006to be plutoed格下げされる
2007subprimeサブプライム〔借金返済の信用力の低い層〕
2008bailout企業への資金援助
2009tweet〔Twitterでの〕つぶやき
2010appアプリ
2011occupy〔格差是正を目指してウォール街などの金融の中心を〕占拠すること
2012#hashtagハッシュタグ
2013because〜だから

「部門賞」

アメリカ方言学会では、「今年の英単語」を選ぶだけでなく、「今年の最も便利な英単語」や「今年の最も不必要な英単語」といった「部門賞」 [3] ともいうべき語も選んでいる。

2013年については、以下のような単語が選ばれている。

2013年の「部門賞」
部門単語和訳
最も便利(most useful)because [4] …だから
最も創造的(most creative)catfishオンライン上で自分のことを間違って伝える
最も不必要(most unnecessary)sharknadoサメがたくさん入っている竜巻
最も突飛(most outrageous)underbutt(下着やズボンで覆いきれていない)尻の下部
最も婉曲的(most euphemistic)least untruthful必要最小限のウソが含まれている
最も成功しそうである(most likely to succeed)binge-watchずっと座り続けて(連続ドラマなどの)映像を見ること
最も成功しそうにない(least likely to succeed)Thanksgivukkah感謝祭の日とハヌカーの日が同じになること [5]
最も生産的 [6] (most productive)-shaming公の場での恥に関する
脚注
  1. American Dialect Society. (2014, Jan.) “Because” is the 2013 Word of the Year [Web log post]. Retrieved from http://www.americandialect.org/because-is-the-2013-word-of-the-year []
  2. e-mail〔電子メール〕, e-commerce〔電子商取引〕の e- である。 []
  3. 「部門賞」という言葉は、説明を分かりやすくするために、私があえてつけたものである。アメリカ方言学会がこの言葉を使っているわけではない。 []
  4. becauseは2013年の「今年の英単語」に選ばれただけでなく、「今年の最も便利な英単語」にも選ばれたのである。 []
  5. ハヌカーはユダヤ教のお祭りの1つ。2013年は感謝祭の日とハヌカーの初日が一致した珍しい年で、感謝祭とハヌカーを合わせて Thanksgivukkah と呼ぶことがあった。ただし、感謝祭の日とハヌカーが一致する年はめったにないので、Thanksgivukkah という言葉が再び使われる可能性は低い。 []
  6. 「生産的」(productive) というのは言語学の専門用語で、様々な表現と結びつきやすいことを示す。 []