中国語での“癌”という字の読み方

概要
中国語での“癌”という字はもともと yán と発音していたが、“肺炎”と“肺癌”が同音になって紛らわしいといった問題があるため、中国大陸では ái という発音になった。

中国語での“癌”という字の用法

日本語の「癌」(がん)は、中国語でも“癌”という漢字を用いてあらわす。胃がんなら“胃癌” wèi’ái/wèiyán となるし、肺がんなら“肺癌” fèiái/fèiyán となる。また、がんを総称して、“癌症” áizhèng/yánzhèng という言う。

“癌”の発音

実は、“癌”という字には2つの読み方がある。「アイ」(ái)と発音する場合と、「イェン」(yán)と発音する場合である。中国大陸では「アイ」(ái)が規範的な発音になる。これに対し、台湾では「イェン」(yán)が規範的な発音で、「アイ」(ái)と発音されることもある。

「イェン」(yán)と発音するのは古い読み方である。大陸でも、本来は「イェン」(yán)と発音していた。しかし、“炎”と“癌”が同音であるため、“肺炎”と“肺癌”が両方とも fèiyán という発音になってしまって紛らわしいという問題があった。このため、混乱を回避するために、「アイ」(ái)となったのである。

“癌”という字は、“疒”(やまいだれ)と“嵒”から構成される。“疒”(やまいだれ)は、この漢字が病気に関連しているという意味を示している。そして、“嵒”は“岩”の異体字である。“岩”は現代中国語では「イェン」(yán)と発音し、日本語では「ガン」と発音する。“癌”を「イェン」(yán)と発音するのは“岩”の発音に由来しているのである。

「アイ」(ái)という発音は、“崖”という字から来ている。“岩”と“崖”は意味が似ているので、これを採用したというわけだ。“崖”という字は「アイ」(ái)と発音する [1] ので、“癌”も「アイ」(ái)になったのだ。

脚注
  1. ただし、今では、中国大陸においては“崖”を yá と発音するようになっている。台湾だと、ái のままである。一般的に、台湾のほうが古い発音を保持していることが多い。 []